「コイツは速いけどじゃじゃ馬でね…」は通用しません! 現代戦闘機の“名機の条件”とは?

キモになる直感的な操作性

 では、なぜ現代の戦闘機開発においては、単なる性能の追求だけでなく、「扱いやすさ」の考察が重要なのでしょうか。

 その理由の1つは、戦闘機の役割が「戦うこと」にあるからだと考えられます。パイロットは飛ばすという仕事と同時に戦わなければならないのです。特に現代戦闘機は対空だけでなく対地攻撃、偵察、電子戦など、その役割は多岐にわたっており、空中でパイロットの仕事量は確実に増大しています。

 このように多様な任務を遂行するためには、高度な機動性だけでなく、優れた操縦安定性、すなわち「操縦に気を取られない」ことが必須で、直感的に操作できることが求められます。複雑な操作手順や、機体特性の把握に多くの時間を要する戦闘機では、多忙なミッションの中で、パイロットは本来の任務に集中することができません。

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スウェーデンが開発した戦闘機「グリペン」(画像:サーブ)。

 この点において、F-35は1つの答えを示していると言えるでしょう。F-35は、高度なステルス性能や先進的なセンサーシステムを備えながら、同時に、非常に直感的な操作性を実現しています。特に操縦についてはほぼ完全に自動化されており、シミュレーターを用いれば、それまで飛行機を操縦したことがない子どもですら基本的な機動や離着陸は可能なほど、優れた操縦安定性を兼ね備えています。

 F-35は、単に操縦が簡単であるだけでなく、高度な情報処理能力とAI技術を活用することで、パイロットの負担を軽減し、戦術遂行に集中できる環境を提供しています。これらを鑑みると、F-35の事例は戦闘機における「扱いやすさ」の重要性を改めて認識させてくれるといえるでしょう。

【了】

【こうやって計っているの!?】F-35のヘルメット作成の様子(写真)

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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