慣れてないヤツ手出し厳禁!?「自衛隊式BBQ」に参加してみた「日ごろの訓練がいかんなく発揮されている…」

奥さん、ヘタに手出すとヤケドするよ

 とはいえ、もてなされっぱなしでは申し訳ないと思い(気が利く妻を演じようと)、飲み物を欲している人を探して周囲を見渡しますが、どう見ても全員のコップが常に満タンではないですか。

「おかしい……」落ち着こうと、自らのお茶を飲み干したところ、横からすかさず「おかわりどうぞ」と爽やかな笑顔の隊員が、お茶を注いでくれました。“飲み物分隊長”はあなたでしたか。「ごん、お前だったか」の“ごんぎつね構文”をここで使うとは思いませんでした。

 そんなわけで、まったくもって付け入るスキがなく(やることがなく)、棒立ちで肉を食べる私。よく見ると、他の隊員の家族も楽しみながらもどこか手持ち無沙汰そうに肉を食べていました。隣の奥様に「ご主人、いつもこうなんですか?」と聞くと、「そうなんです……、家で鍋をしてもやることがなくて」と苦笑い。

「わかります、わかりすぎます」我が家でも、自宅で鍋や焼き肉をやる際は、やこさんが全て仕切るため、私も娘もお皿に食材が運ばれてくるのを待つのみという、たとえるなら殿様気分とでもいえる、何とも言えない空気感を味わっているのです。

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バーベキュー(BBQ)は陸海空の各自衛隊でレクリエーションの一環として盛んに行われている(画像:陸上自衛隊)。

 爽やかな風の中、どこからともなく「肉をもらってない人いますか!」「オレンジジュース開けました!」などの声が飛び交います。こんなにせっせと働く隊員のみなさんは、きっとお肉を食べる暇もないのだろうと思いきや、あれだけあった食材は姿を消し、買い出し部隊が近くのスーパーで肉を大量に追加購入してきました。

 なんなら我々民間人以上に食べている……。やこさんに聞くと「教育隊などでは、限られた時間の中で食事をしなければならないからね」と返されました。出港中も、寄港地などでは限られた時間の中で楽しむ弾丸ツアーを組む隊員もいると聞きます。

 骨の髄まで染みついた自衛官魂、それはBBQにおいても発揮されていました。

 このような「職業病」ともいえる手際の良さは、後片付けでもいかんなく発揮されます。お腹いっぱいだから、片付けを手伝おうかと踏み出すと、すでにいつでも撤収できる光景が広がっていました。

 ゴミ1つなく、そこにいた形跡すら残さないのも訓練の賜物でしょうか。結局なにもすることなく、もてなされただけのBBQ、ちょっぴり申し訳なく思うものの、休日に主婦業を休ませてくれたことには、感謝しきりでした。

【了】

【マンガを読む】自衛隊式BBQ、その奥義とは

Writer: たいらさおり(漫画家/デザイナー)

漫画家・デザイナー。夫のやこさん、娘のみーちゃんと暮らすのんきなオタク。海自にはまってからあれよあれよと人生が変わってしまった。著書「海自オタがうっかり『中の人』と結婚した件。(秀和システム)」「北海道民のオキテ(KADOKAWA中経出版)」各シリーズ発売中。

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