世界最古の記録映像! 撃沈が捉えられた戦艦とは? 今はなき大帝国の崩壊の前兆か
活路を開くために出撃! しかし……
いよいよ作戦実行のために、アドリア海に向けて出発した「セント・イシュトヴァーン」。しかし道中、イタリア海軍に発見され、魚雷挺の雷撃を受けて、右舷に魚雷が被弾するとすぐに傾きだし、ほどなくして転覆。そのまま沈没してしまいました。
1000人以上の乗組員の多くは海へ投げ出されてしまいましたが、死者は89人と比較的少数にとどまっています。これはオーストリア=ハンガリー帝国海軍が乗組員の水泳教育に力を入れていたことや、沈没当日は海がベタ凪(海面が風や波が全くない状態)で荒れていなかったからで、こうしたことが死者を最小限にとどめる要因になったと言われています。
この際の沈没の様子は、戦艦を撮影対象にしたものとしては、史上初めて動画で撮影されており、「セント・イシュトヴァーン」が転覆して海中に沈んでいく様子や、乗員たちが海に飛び込む様子、その後波のない海面を泳ぐ様子などが残されています。1918年に撮影されたとは思えないほど鮮明に残されたこの動画は、以後、赤十字の資金調達活動に使用されたと言われています。
ちなみに、日本では船が沈むという言葉がいくつかありますが、その中で特徴的な言葉が「轟沈(ごうちん)」です。一般的に沈む船は「沈没」と表記されますが、「轟沈」は、「損傷を受けてから1分以内に沈むこと」という意味があるのだそう。「セント・イシュトヴァーン」の動画は、かなり早いスピードで沈んでいることがわかります。損傷を受けてからどのくらいの時間があったのかはわかりませんが、沈没までの時間を考慮すると「轟沈」したと言ってもよいのかもしれません。
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