え、乗客私だけ…? 日本一短い非電化私鉄に乗ってみた 運賃安いし大丈夫?

非電化路線としては日本一短い、和歌山県御坊市を走る全長2.7kmの紀州鉄道。終点まで乗っても運賃は180円と格安です。どのような利用のされ方をしているのでしょうか。

会社の看板として存続

 ケーブルカーなどを除き「日本一短い鉄道」は、千葉県の東成田~芝山千代田間2.2kmを結ぶ芝山鉄道ですが、「非電化路線で」という条件を加えると、和歌山県の御坊~西御坊間2.7kmを結ぶ紀州鉄道となります。

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紀州鉄道KR205形は元・信楽高原鐵道SKR200形(2024年7月、安藤昌季撮影)。

 紀州鉄道の歴史は古く、1931(昭和6)年に御坊臨港鉄道として御坊~御坊町(現・紀伊御坊)間が開通したのが始まりです。1934(昭和9)年には日高川駅(後に廃止)まで全通しますが、このときは全長で3.4kmでした。

 太平洋戦争や紀州大水害の被害を乗り越え、1960年代には年間100万人の利用者がいましたが、そこをピークに乗客が減少。1973(昭和48)年に東京の不動産業者に買収され、紀州鉄道となりました。そして1989(平成元)年に末端区間の西御坊~日高川間が廃止され、現在に至ります。

 輸送密度(1kmあたりの1日の平均利用客数)はコロナ禍前の2019年で205人。国土交通省がローカル線の存廃を議論する目安が1000ですから、その5分の1の利用に留まります。

 紀州鉄道の中川社長は以前、「乗りものニュース」の取材に対し鉄道を存続させている理由について、「紀州鉄道という社名は、鉄道事業以外の全てに浸透したブランドとなっており、沿線の人々に愛され、応援されています。鉄道の赤字は数千万円ですが、会社の看板・広告費用と考えています」としており、廃止の話は現在のところありません。

 筆者(安藤昌季:乗りものライター)は平日、御坊駅12時17分発の列車に乗車しました。停車していたのはKR205形。元・信楽高原鐵道SKR200形で、2017(平成29)年に導入されました。車体は輸送力が小さい路線向けに製造された富士重工業の「LE-DC」。車内は冷房効果を高めるためかカーテンが閉められており、オールロングシートでした。

 誰も乗っていないので写真を撮っていると、運転士から声をかけられ、路線の見どころや紀伊御坊駅で硬券の入場券を販売していること、折り返し時間が長いため、全区間乗車するなら西御坊駅から紀伊御坊駅まで歩いた方がよいことも教えてもらいました。

まるで民家の軒先 レトロな西御坊駅(写真で見る)

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