え、乗客私だけ…? 日本一短い非電化私鉄に乗ってみた 運賃安いし大丈夫?
復路は打って変わってにぎわう車内
600m先が市役所前駅です。御坊市役所の前にあり、開業は1967(昭和42)年と同線では新しい駅です。御坊市の中心部で周囲には文化会館、図書館、体育館などもある便利な立地ですが、ここでも乗車はなし。結局、300m先にある終点の西御坊駅まで、誰も乗ってきませんでした。
御坊駅からわずか8分で終点へ。12時25分の到着でした。この駅は1面1線で、民家のような木造駅舎が趣深いです。ホームはかなり狭く、目の前に駅舎が迫っています。昭和へタイムスリップしたような感覚を覚えました。
意に反して駅舎内は広く、仮設タイプのトイレや自販機も設置されていました。駅舎から出ると、線路が少し先まで続いていることに気付きました。以前は700m先に日高川駅があり、王子製紙、大和紡績などへの貨車も出入りしていたそうです。
駅の近くは商店街で、地域名「日高御坊」の由来にもなった本願寺日高別院があります。なお、終点の西御坊駅まで乗車しても運賃は180円であり、社長がおっしゃった「利益が出ずとも会社の看板として運行している」ことを実感しました。
運転士にアドバイスいただいた通り、紀伊御坊駅まで徒歩で戻ります。その近くで、民間企業の事務所となっている保存車両キハ603を見かけました。駅舎に入ると、有人窓口と本棚、戦艦「大和」の模型、「鉄道むすめ」の看板なども置かれており、味わい深い風景です。若い女性が1人、列車を待っていました。
13時7分、折り返しの列車が入線。先ほどのがら空きが嘘のように10人以上が乗車しており、女性と筆者ほか発車間際に1人が乗車し、車内はにぎわいます。学門駅でも中学生くらいのグループが乗車し、乗客は20人程度となりました。
運賃が極めて安いから、このような1駅利用(120円)もあるのかと感心していると、あっという間に御坊駅に到着。地域の人たちが慣れた様子で料金を支払い下車すると、すぐに周囲は静けさを取り戻していました。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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