「はい荷物出してください~」って一切言われなかったぞ… 驚愕の「駆け込み乗車すらできちゃうLCC」何でそんなにユルいの?
保安検査がない代わりに…
エア・ノースの就航先では、ユーコン準州の小さな都市であるドーソン、イヌビク、オールドクローの各空港において保安検査がありません。ホワイトホース空港ではドーソン線の保安検査はない一方、バンクーバー線では実施しています。
それでも広報担当者のコスタラスさんは「旅行者と航空機、乗務員の安全は当社の最優先事項で、運輸省が定める規則を順守しています」と強調します。その方法は搭乗口を抜け、航空機が止まっているエプロンへ向かうために階段を降りたところで分かりました。
地上職員が航空券と身分証明書を確認しており、その際に2個まで持ち込める手荷物の大きさの規定(高さ38cm、縦22cm、横28cm)などに合致しているかを目視でチェックしていたのです。
機内は、42席のどこに腰かけても良い自由席。飛行中は飲み物に加えてサンドウィッチも提供され、窓の外に広がる大自然の風景を楽しみながら大らかな空の旅を満喫することができました。
機内で話したカナダ人男性は「(2001年の)アメリカ同時多発テロが起きる前の航空機に簡単に乗れた時代を思い出したよ」と振り返っていました。彼が言うとおり、あの事件以降、空港のセキュリティは大幅に強化され、保安検査も厳格に行われるようになっています。
それでも、無差別テロに近い殺傷事案は新幹線をはじめとして鉄道でも起きているため、日本を含め、各交通機関のセキュリティが緩和されることはまずないでしょう。
そのため、前述したようなカナダの「かなり緩い」保安検査は世界的に見てもレアケースです。まさしく電車に乗るように航空機に乗れる希少な体験がいつまで続くのかは見通せません。
エア・ノースへの搭乗を目的のひとつにして、ユーコン準州を訪れてみてはいかがでしょうか。
【了】
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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