陸海空を制覇した「夢の戦車」だ! ギネス登録された“世界的ベストセラー” なぜ最強になれなかった?
現在の主力戦車はかなり早いですが、それを上回る速度をたたき出していた戦車が1970年代に存在しました。FV101「スコーピオン」、この戦車はなぜ生まれたのでしょうか。
10式戦車より10km/h以上速い!
分厚い装甲に守られた戦車は、重そうな見た目から動きも鈍重かと思われがちですが、そうでもありません。例えば陸上自衛隊が運用している10式戦車は、整地であれば70km/h以上出すといわれています。この速度は現在運用されている世界の主力戦車では速い方に分類されます。しかし過去には、さらに速い戦車がありました。それは、イギリス生まれのFV101「スコーピオン」です。
この戦車は、履帯(キャタピラ)駆動であるにも関わらず、最高速度82.2km/hという高速を発揮することが可能です。
この速度は装輪戦闘車両に比肩するスペックで、いまだに「世界最速の量産戦車」としてギネス世界記録を保持し続けています。なぜここまで高速の戦車が完成したかというと、イギリス陸軍がとある部隊に特化した戦車を欲しがっていたからです。それは空挺部隊です。
イギリス陸軍にはSAS(特殊空挺部隊)を始めとして、優れた空挺部隊が存在します。しかし、これらは個々の兵士の技能こそ高いものの、武装に関してはパラシュート降下が前提の空挺部隊であるがゆえに、大重量の戦車や大砲などを装備することはできず、携行できるのは肩撃ち式ミサイルや無反動砲程度が限界でした。そのため、奇襲や偵察が失敗し敵地で孤立した場合、敵が装甲車両や重武装をした兵士で攻撃してくると、反撃するのが難しいという大きな欠点を持っていたのです。
そこで、空輸できる重さの戦車を空挺部隊に随伴させられないか考え、第二次世界大戦時には、たまたま余っていたMk.VII「テトラーク」軽戦車を、軍用グライダー「ハミルカー Mk I」に搭載します。大戦を通して数両しか運用されることなく終わりましたが、同車の空挺部隊への配備は一応の成功を収めることになります。
戦後はこの方法をもっと大規模に行おうと考え、空輸可能でかつ攻撃力にも優れた新型戦車の開発が計画されました。その頃は偵察用の装輪装甲車、FV601「サラディン」の後継車両も必要になりつつあったことから、この偵察用装甲車と、空輸可能な空挺戦車、両方を統合した戦闘車両としてFV101「スコーピオン」は開発されることになりました。
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