度胸試しなのか…? 世界でやってたロシア戦闘機の危険飛行 根底には「ならでは」の文化?

危険な飛行やめればメリット大!

 これらはロシア空軍による危険な行動の一部で、実際はさらに多数存在することは間違いないでしょう。このようなロシアの戦闘機による危険な飛行は、意図的に度胸試しを行っているのではないかという疑念をも抱いてしまいます。「度胸試し」とは、極限状態で危険な行動をあえて試みることで、自分の勇気や技術を証明しようとする行為です。これがロシア国内で、もっといえばロシア軍内部で文化として根付いている可能性があるのです。

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2023年度の空自機によるスクランブルの対象となったロシア機・中国機の飛行パターン例(画像:統合幕僚監部)。

 ロシア空軍において度胸試しの文化が存在するとの見方は、その背景にある訓練や教育方法、さらには組織全体の意識に起因していると考えられます。危険を顧みずに接近飛行を行うことで、自らの勇気を示し、さらには同僚や上官からの評価を得ようとする意識が働くこともあるでしょう。

 しかし、このような行動は極めてリスクが高く、万一にも衝突事故が発生すれば、その被害は甚大です。実際に墜落した「リーパー」は無人機であるからまだしも、自身さえ墜落するリスクを負うことは明白です。ロシア軍ではなく中国の事例ではありますが、2001年4月1日にはJ-8II戦闘機がアメリカ軍のEP-3偵察機に危険な接近飛行を行い衝突。J-8IIは墜落しパイロットは殉職、EP-3は不時着するという事故も発生しています。

 ロシア戦闘機による度胸試しのような危険な飛行は、その背景にある安全への意識の低さから発生している可能性があります。戦闘機に限らず航空機の運航は高度なプロフェッショナリズムが要求されます。このような考え方を「エアマンシップ」と呼びます。各国は自国のパイロットに対して厳格な訓練と教育を施し、手順を順守させ、安全な飛行を徹底させる必要があります。

 ロシアもまた、エアマンシップの観点から、自己の行動を見直す必要があると言えるでしょう。それは、外交上の問題や安全だけではなく、練度を高めるという点にも直結することから、巡り巡って最終的には自分たちの利益にもつながるはずです。

【了】

【空自機が撮影!】これが胴体2つある中国軍の「異形機」です(写真)

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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