地名に現れる災害 土石流が列車を襲った例も

広島市の土砂災害について、その発生場所の旧地名が土砂災害発生箇所を意味するものだったと報道されています。過去にはそうした「災害地名」を持つ駅で、土石流が列車を直撃。しかし乗務員の機転で多くの命が救われたことがありました。

130人の命を救った乗務員の機転

 鹿児島市竜ヶ水は急傾斜地と鹿児島湾に挟まれた地勢の険しい場所で、急傾斜地と海に挟まれたわずかな場所に国道10号線とJR日豊本線が通り、竜ヶ水駅が設けられています。

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急傾斜地と鹿児島湾に挟まれた日豊本線竜ヶ水駅。鹿児島中央駅から2駅、10.1kmの場所にある。

 竜ヶ水周辺の地質は鹿児島に多い火山性の「シラス」で、浸食に弱く水に流されやすいという性質を持っています。また鹿児島市の資料によると、「竜ヶ水」という地名は「竜が水を吹くように水害が多い」のが由来とされています。

 1993年8月6日、鹿児島市周辺は1時間あたり最大99.5mm、1日の雨量は259mmという記録的な豪雨に見舞われます。日豊本線では安全のため運転が中止され、竜ヶ水駅には2本の列車が停車。天候の回復を待っていました。

 しかしそのとき、竜ヶ水駅付近の線路で土砂崩れが発生。しかも竜ヶ水駅を挟んで両側で発生したため、列車は竜ヶ水駅から動けなくなってしまいました。

 状況はさらに悪化します。竜ヶ水駅のすぐ近くで土石流の予兆が発見されたのです。駅と停車している列車を土石流が直撃するのは、時間の問題でした。絶体絶命の乗員乗客およそ130名。隣の駅に避難することもできません。

 こうした豪雨による運転見合わせの場合、乗客は車内で待機させるのが基本です。しかし乗務員は列車から乗客を降ろし、海へ避難させました。そして列車を、土石流に襲われそうな場所へあえて移動させます。列車を盾にして土石流の勢いを弱め、海に避難した乗客に被害が出るのを少しでも食い止めようと考えたのです。

 その直後でした。土石流が竜ヶ水駅に襲来したのは。あっという間に駅は土砂に飲み込まれ、列車は大破。しかし乗務員の機転で海へ避難した乗客は、全員が無事でした(避難指示に従わなかった乗客3名は死亡)。避難した乗客はその後、陸上交通が土砂災害で寸断されていたため、海上保安庁や自衛隊、漁船などによって海から救助されました。

 日豊本線の竜ヶ水駅にはその土石流で流れてきた岩石を用い「災害復旧記念碑」が建立され、鹿児島湾とそこにそびえる桜島を背景に、災害の歴史をいまに伝えています。

【了】

Writer:

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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