あえて車内照明を消す列車 その合理的理由
長野県に、車内の照明を消して「あるもの」を楽しむ臨時列車が走っています。その列車に乗って、「あるもの」を堪能してきました。
車内の照明を消す合理的な理由
夜に列車へ乗っていて、もし車内の照明が消えた……。遭遇したくない状況ですが、あえてそうして照明を消す列車が長野県を走っています。その列車に2014年8月、乗車しました。
長野県千曲市にあるJR篠ノ井線の姨捨駅。駅前に商店のひとつもない山間部の静かな駅で、その列車は出発を待っていました。
そして20時24分、20km少々離れた長野駅へ向けて発車。姨捨駅の標高は551.2mで、目的地の長野駅は360.5m。およそ200m、山を下っていくことになります。
姨捨駅を発車し、山を下り始めてほどなくの、そのときでした。「照明を消す」旨の放送が入り、車内が暗くなったのは。
しかしそこで広がったのは暗闇ではなく、イルミネーションのような車窓でした。進行方向右側、窓の外200m近く低い位置に善光寺平(長野盆地)が広がり、その街灯りが瞬いています。盆地で周りを山に囲まれているため、暗闇のなかでそこだけ明るく、キラキラと車窓に浮かび上がっています。
列車の標高が下がり、そうした車窓が見えなくなると、再び車内の照明が点灯。先ほど高い場所から見下ろした善光寺平へ入り、街灯りのなかを走って終点の長野駅に到着しました。
この列車は「ナイトビュー姨捨」という快速列車で、その名の通り、善光寺平の夜景を車窓から眺めて楽しむことを主目的にしています。ただ外が暗く、車内が明るい状況では、窓ガラスに反射して外がよく見えません。そこで夜景をより堪能できるよう、この列車は車内の照明を一時的に消して走行しているというわけです。もちろん照明を消すといっても真っ暗では危険なので、最低限の明かりがあります。このように「夜景を楽しむための列車」というのは、とても珍しい存在です。
また車内の照明を最低限残して消すことは、夜行列車でもみられます。もちろん夜景のためではなく、睡眠のためです。
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