まもなく一部廃止 吾妻線フィーバーと地元老人
撮り鉄とパトカー、笑顔の老人
旧線の廃止を間近に控え、大勢の人々が押し寄せている吾妻線。その取材では、次のような印象も受けました。
・鉄道ファン以外も少なくない。
「ニュースで廃止を知って目的地に川原湯温泉を選んだ」というハイキング風の出で立ちをした40代女性や、「もう少しで無くなるから写真を撮ろうと思って」という地元ナンバーの軽自動車で駅を訪れた70代男性など、特に鉄道ファンには見えない風体の人も多くいました。一眼レフカメラを持った男性に車で連れられてきた手ぶらの彼女、奥さんの姿もちらほら。鉄道趣味活動の現場でカップルというのは少ないと思われますが、こうした話題性のあるものでは女性もついて行きやすいのでしょうか。
・撮り鉄の多さ
写真を撮る鉄道ファン「撮り鉄」の姿が、廃止区間のシンボル的存在である樽沢トンネルで特に多く見られましたが、それ以外の場所でもしばしば見られました。また筆者が川原湯温泉駅で列車を待っていて、まもなく列車が到着するというそのとき、線路脇からカメラを持った人が出てきて線路を横断。幸いにも大ごとにはなりませんでしたが、列車が警笛をけたたましく鳴らすという出来事も。ホームでは「危ないなー、なにやってんだよ」と、鉄道ファンらしき男性がつぶやいていました。
・しばしば見かけたパトカー
線路と並行して走る国道145号線で何度かパトカーを見かけました。この日、駐車禁止場所や交通の支障になる場所に停めていた車は特に見ませんでしたが、そうした路上駐車の問題はこうした路線廃止などの際、しばしば耳にすることです。
さて、今回の取材で筆者がカメラ片手に線路周辺を散策していると、何度か地元の老人に話しかけられました。そこで聞かれた「八ッ場ダムは政治でいろいろあって、とても時間がかかったけども、もうすぐ線路が立派な新しい線路になって、ひとつの区切りだね」という70代女性の言葉が心に残っています。またそうして話しかけてくる老人たちは、みな笑顔でした。過疎化が問題になっている郷土に大勢の人々が訪れ賑やかになり、嬉しかったのかもしれません。
吾妻線の旧線区間は明日24日、営業を終了します。最終日ということで大変な賑わいが予想されますが、そうした地元の人たちの笑顔を曇らせることなく、つつがなく最期を迎えられることを祈ります。
【了】
Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
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