知事選で高まる気運 リニアモーターを使った沖縄の「普通鉄道」建設構想とは

導入予定の「小型リニア鉄道」

 沖縄県の構想では、普通鉄道建設にあたり「小型リニア鉄道」という方式を採用するとしています。

 これは「リニア」といっても、浮上して500km/h以上で走行する「超電導リニア」ではありません。2本のレールのあいだに設置された「リアクションプレート」と、車両に搭載したコイルとのあいだで発生する磁界によって推進力を得る「鉄輪式リニアモーターカー」と呼ばれるものです。浮上はしません。すでに都営地下鉄大江戸線や大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線、福岡市地下鉄七隈線など各地で採用例があります。

Large 20141109 okinawa2
「鉄輪式リニア」の大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線。レールのあいだに設置されているのが「リアクションプレート」(2010年2月、恵 知仁撮影)。

 この「鉄輪式リニア」は「スマート・リニアメトロ」とも呼ばれ、次のようなメリットがあります。

・車両の床下に大きなモーターを搭載せずに済むため、車両を小さくすることが可能。つまりトンネルの断面も小さくできるので、建設費が安くなる。
・一般的な電車はモーターで車輪を回して走る。しかし車輪とレールは摩擦力が小さく滑りやすいため、一般的な電車は急坂や急カーブに弱い。しかし「鉄輪式リニア」は車輪の回転ではなく、車両とリアクションプレートとのあいだに発生した磁界で動くので車輪が滑りにくい。そのため急坂や急カーブに強い。
・急坂や急カーブに強いと路線のルート選定に自由度が増し、建設費を安くしやすい。
・車両にギアなどの可動部分がないため保守が容易。

 最高速度は100km/hが目標とされており、長さ12mの車両の4両編成が考えられています。1両あたりの長さが約15.7mである長堀鶴見緑地線の車両が、4両編成で定員が380人なので、12m×4両では単純計算で290人程度の定員があることになります。

 またコスト削減のため、地下区間については運転士が乗らない「ドライバーレス運転」も検討されています。

 運営はインフラ部分を公が負担し、別の事業者が運行を担うという「公設型上下分離方式」が想定されており、1日の利用客が4万3000人あれば年間9億8000万円の黒字と計算しています。ただ建設コストは、沖縄県の計画では5600億円です。沖縄への新鉄道建設については内閣府でも2010年から事業費とその圧縮について調査、検討が行われており、そのゆくえが注目されます。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。