私鉄唯一の夜行列車、今冬も走行 超ピンポイントなその走行理由とは

長距離を走りそうな夜行列車ですが、路線が短い私鉄でも運転されており、今冬も走ることになりました。しかしその運転目的は、とてもピンポイント。それゆえ鉄道ファンを悩ませていたりします。

3時間少々の距離に夜行列車が運転される理由

「夜行列車」は、普通に考えれば長距離を走るため夜通し運転されるわけです。よって「夜行列車」は、日本では全国に路線網を持つ国鉄・JRの専売特許だと思うかもしれません。しかし実は私鉄でも夜行列車が運転されており、今冬もその運転が決まりました。

 夜行列車が走っているのは、東京・埼玉・栃木・群馬・千葉に路線網を持つ東武鉄道と、栃木・福島県に1路線を持つ野岩鉄道です。JR以外で夜行列車が走っている鉄道としては、寝台特急「カシオペア」「北斗星」が通過するIGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道も挙げられますが、JRと無関係の夜行列車は東武・野岩鉄道のものしかありません。

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「スノーパル23:55」に使われる車両は、かつて急行「りょうもう」として走った300系電車(資料:東武鉄道)。

 東武・野岩鉄道を走っている夜行列車「スノーパル23:55」は、東京都台東区の東武鉄道浅草駅から野岩鉄道線へ直通。福島県南会津町の会津高原尾瀬口駅まで走っています。

 ただ浅草~会津高原尾瀬口間は175.3kmしかなく、所要時間は快速列車で3時間少々。夜行列車を走らせるような距離ではありません。なぜそこで運転しているのでしょうか。

 理由は週末の深夜に東京を出発して、次の日、朝イチでスキーやスノーボードを楽しむためです。列車は浅草駅を23時55分に発車すると、近隣にたかつえスキー場、だいくらスキー場がある会津高原尾瀬口駅へ5時18分に到着。東武鉄道は「スノーパル23:55」について「スキー・スノーボード専用夜行列車」と表現しており、「スキー場には早朝に到着しますので、さらさらのパウダースノーが実感でき一日たっぷりスキー・スノーボードを楽しめる」といいます。

「乗り鉄」を悩ませる「スノーパル」

 ピンポイントな運行理由から、この列車自体も特殊要素が多くなっています。運転日はスキーシーズンの金曜・土曜が中心で、浅草発会津高原尾瀬口行きの下り列車しか運転されません。途中の停車駅は北千住、新越谷、春日部ですが、線路の除雪作業や時間調整のため新藤原駅(栃木県日光市)で長時間停車します。

 そしてこの列車、実は「乗り鉄」には少々敷居が高いことで知られています。普通に乗車券と特急券を買ってという形ではなく、鉄道の往復チケット、会津高原尾瀬口駅からスキー場までの往復バスチケット、スキー場の一日リフト券などがセットになった旅行商品を購入しないと、「スノーパル23:55」には乗ることができないからです。

 とはいえ、この「スノーパル23:55」は非常に珍しい私鉄の夜行列車。ぜひ乗りたいと苦悶した結果、その旅行商品を購入しつつもバスやリフト券などの権利を放棄。スキー場へは行かず、どこか別の場所へ向かうというウインタースポーツが得意でない乗り鉄もいるとか。

 「スノーパル23:55」は今シーズン、12月27日から運転開始。乗車日の1ヶ月前から東武トラベルの各支店で、この列車を使った旅行商品が販売されます。詳細は次のサイトをご覧ください。

「東武のスキー・スノーボード専用夜行列車【スノーパル23:55】」
http://www.tobu.co.jp/snowpal/

 また東武鉄道と野岩鉄道には、5月末から10月中旬も同じ区間で夜行列車が走っています。「尾瀬夜行23:55」という名前の通り、早朝から尾瀬の散策を楽しむための列車です。2014年のダイヤは23時55分に浅草駅を発車すると、3時18分に会津高原尾瀬口駅へ到着。4時20分、そこを専用バスで出発して尾瀬の入口である沼山峠へ6時10分に到着するというものでした。こちらも「スノーパル」と同様、この列車を使った旅行商品を購入することで乗車できるシステムになっており、「乗り鉄」を悩ませています。

【了】

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道ライター、イラストレーター。「鉄道」や「旅」に関する執筆活動や絵本の制作を行っているほか、鉄道車両のデザインにも携わる。子供の頃からの旅鉄&撮り鉄で、日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済み。完乗駅はJRが稚内で、私鉄が間藤。メインは「鉄道」だが、基本的に「乗りもの」好き。

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