地方鉄道の救世主になる大手からの譲渡車両 観光資源化も
「日本人らしさ」のある譲渡車両
譲渡車両はそうした経済的な観点のみならず、旅行や鉄道趣味の観点からも注目が集まっています。
元京阪3000系電車を譲り受けた富山地方鉄道では、車体の塗色を同社オリジナルのものに変更して使っていましたが、2012年に一部の車両について、京阪時代のデザインに戻しました。旅先で懐かしい車両に出会えることが、ひとつの売りになるからです。大都会を走っていた車両が、現在はのどかな田園風景を走っているといったギャップも魅力かもしれません。鉄道ジャーナリストの渡部史絵さんによると旅行者に楽しんで貰う目的で、譲渡された車両をあえてオリジナルデザインのまま使っている鉄道会社も少なくないそうです。
ただ譲渡車両はそうした「変わらないこと」のみならず、逆に「変わったこと」でも旅行や鉄道趣味の観点から注目されています。青森県を走る弘南鉄道では元東急の電車を譲り受けて使用していますが、そのつり革は青森らしくリンゴ風。その土地ならではの色に染まっており、こうした「違い」も旅行者や鉄道ファンを楽しませているのです。
またこうした譲渡車両には、ひとつの「日本人らしさ」も現れているかもしれません。中小の鉄道会社へ譲渡された中古車両はこまめに補修しながら大事に使用され、技術の継承にも役立っているそうで、「物を大切にする日本人の心」を象徴するひとつが、この「譲渡車両」ではないかと渡部さんはいいます。
地方鉄道では現在、例に挙げた東急や京阪のほか京王や西武などの中古車両も多数活躍しています。
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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
様々な事情や経営上の面で中古車両を導入する場合、 「その車両自体を観光資源にする」 という考え方は是非とも持ってほしいです。
塗装などをそのままにして 「都会で走っていた時の懐かしさ」 を演出したり、「昔の時代」を再現する道具として映画やCMなどの撮影を誘致する手段に活用したり
或いは必要な改造を行なってその地域・会社ならではの経営手段として用いたりと・・・。
せっかく買う中古車両を積極的にその地域や鉄道の集客に活かせるような動きを期待しています。