旧式より弱い新鋭戦闘機F-35? 99年間くり返される無意味な比較

アメリカで開発が進められている新鋭戦闘機F-35が、旧式のF-16に模擬戦闘で撃墜される、という出来事がありました。なぜこのようなことがおきるのでしょうか。実はこうした事例、およそ1世紀もくり返されています。

実は珍しくない「下克上」

 アメリカにおいて開発中の新鋭戦闘機ロッキードマーディンF-35「ライトニングII」。このF-35はまもなく初期作戦能力(IOC)を獲得する予定であり、実用化が目前となっています。

 しかし2015年7月に入って「F-35はF-16との模擬戦闘において撃墜判定を受けた」というニュースが報道されました。ロッキードマーディンF-16「ファイティングファルコン」は1970年代に開発された現在の米空軍主力戦闘機です。F-35はF-16の後継機となる機体でありながら、旧式のF-16が勝利したという事実が大きな話題となっています。

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手前が旧式機のF-16、奥がそれに撃墜判定を受けたという後継機のF-35(写真出典:アメリカ空軍)。

 報道された事実をまとめると、F-35は機動性の面においてF-16に大きく劣り、格闘戦能力が低いうえ、後方視界が悪く背後を取られた場合にパイロットはそれに気付けない、というものでした。後継機が旧式機に敗北する――なぜこのような「下剋上」が生じてしまったのでしょうか。

 実は、こうした事例は珍しくありません。たとえば太平洋戦争直前に実用化された帝国陸軍の一式戦闘機「隼」と帝国海軍の「零戦」があります。隼と零戦は、それぞれの前任機九七式戦闘機および九六式艦上戦闘機と格闘戦を行った場合、不利を強いられたとされます。そして、恐らく最古の例は1916年に初飛行したフランスのスパッドS.7が、その前任機ニューポール11に敗北したという事実でしょう。

 隼、零戦、スパッドS.7は低速でグルグル背後を取り合う1対1の格闘戦能力よりも、スピードを重視し高速度の集団戦を想定した機体です。そして、全てに優れた万能の戦闘機はあり得ません。つまり、そもそもの開発目的が違う機体を1対1の格闘戦で比較すること自体が誤りなのです。

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コメント

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5件のコメント

  1. 戦闘機を乗り物として扱うのはおかしくないですか?
    人が乗れたら何でも乗り物だったら、ユンボのような工事用車両も乗り物になってしまいます。

    • 大いに歓迎するわ

  2. 零戦、隼は格闘戦を優先して開発された戦闘機です。
    デタラメ言わないように

  3. 零戦は格闘戦重視の開発ですが、同時にスピードも要求されていますさらには長大な航続距離と20mm機関砲の装備を海軍は要求しています、艦乗機の制約から離着陸速度の制限とまるでオリンピックの各種競技の全てで金メダル要求する仕様です、サウジさんは96観戦の格闘戦での有利性は全ての面で勝ると思われていませんか?本当は水平面の旋回性のみが優れていますが垂直旋回では零戦にかないませんし上昇力でははるかに劣ります、スピードを上げた戦い方では問題外と言える性能差が有ります、坂井 三郎の大空のサムライなどの著作物を図書館ででも見て下さればご理解いただけると思います。今回のこの話も時代の変化を見た上での評価が必要です。

  4. より優速の米軍機相手なので格闘戦を強いられただけで、本来は単葉単座の高速戦闘機として設計されたのだから合ってる