経済に悪影響も? いよいよ走り出す日本の自動運転車、そこにある大きな懸念

 ロボタクの登場について、「グーグル、アップルと肩を並べるくらいまで育って欲しい」と、IT産業界を中心に日本国内各地から大きな期待の声が上がっています。

 一方で自動車産業界からはロボタクに対し、懐疑的な見方が多いのが現実です。長年自動車業界にいる人たちは、「一気に完全自動運転をやるにはリスクが大き過ぎる」という考え方なのです。

 自動車産業界が現在開発を進めている自動運転は、「運転者に対する“運転支援”を徐々に高度化して、その延長上として完全自動運転の可能性がある」という立場です。

“運転支援”とは、追突の際の衝突軽減ブレーキ、走行車線からはみ出したときの注意喚起、そして前のクルマとの車間距離を保って追従するクルーズコントロールを指します。これらを可能とする機能は、カメラ・レーザー・レーダーなどの各種センサー技術、GPSなどを利用した衛星測位システム、そして「デジタルインフラ」と呼ばれる高度な地図情報によって今後、徐々に高度化している計画です。

 こうした「徐々に自動運転を目指す」ため、日本では自動車メーカー、自動車部品メーカー、地図の関連企業などがオールジャパン体制で挑んでいます。それが、内閣府を中心として関係各省庁が横連携する「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)です。10月後半には東京モーターショー開催を受けて、東京・お台場でSIPに関する大型イベントが開催される予定です。

 これに対して、ロボタクを後押ししているのもSIPと同じ内閣府です。こちらは、地方創生を基盤とした「近未来技術実証特区」の枠組みです。

 つまり内閣府のなかに、違う考え方を持つふたつの自動運転政策が同時に走っているという状況なのです。SIPは旧来型の自動車産業的な考え方、そしてロボタクはITベンチャー産業的なの考え方です。

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GPS、カメラなどを活用して自動運転を行うロボットタクシー(2015年8月25日、桃田健史撮影)。

 ロボットタクシー社の社長でDeNAの執行役員・オートモーティブ事業部長の中島宏氏は「自動車産業はいま、歴史的な変化の時期を迎えています。我々はこれを大きな商機として捉えています」として、今後も思い切ったビジネス戦略を打ち出す構えです。

 果たして日本政府の方針は今後、一本化されるのでしょうか。それとも、ふたつの流れを容認し続けるのでしょうか。

 これから先、クルマとITが喧嘩別れをして、最終的に日本経済にとってマイナス効果にならないことを祈りたいと思います。

【了】

Writer: 桃田健史

世界各地で輸送機器、IT、環境などの取材を続けるジャーナリスト。近著に『アップル、グーグルが自動車産業を乗っとる日』(洋泉社)、『未来型乗り物「超小型モビリティ」で街が変わる』(交通新聞社)。

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