MRJの命運握る革新的エンジン その強み、活かせるか
革新的エンジン搭載でライバルに先行するMRJ
MRJが搭載するエンジン「PW1200G」は、アメリカのプラット・アンド・ホイットニー社が開発した「ギヤード・ターボファン」と呼ばれるエンジン。ファンにタービンから抽出された動力を伝達する際、途中にギア(減速機)を設けることによってファンだけをゆっくり回し、ファンとコンプレッサー、それぞれを最も効率的に運転可能な回転数の両立を実現しています。
このギヤード・ターボファン自体は既存技術ですが、これまではほとんど小型のビジネス機に搭載されていました。この新機軸のエンジンがMRJの低燃費を支えているのです。
ギヤード・ターボファンは今後、多くの旅客機に搭載されていくことになります。実際にMRJのPW1200と共通の設計を持ったエンジンを搭載するエンブラエル「E-Jet E2」が、MRJの223機を上回る325機の受注を集めているほか、やや大型の機体ながらボンバルディア社の「Cシリーズ」も受注は243機に達しています。
MRJは開発が難航し、たびたびスケジュールの遅延が生じていますが、MRJ最大の強みはギヤード・ターボファン搭載旅客機としてE-jet E2などの競合機に対し先行している、というアドバンテージを有していることです。三菱航空機としてはこれ以上の遅れが生じぬよう、実用化を急ぐことが大きな課題となっています。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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