日本と「カナダ」なぜ急接近? 安全保障「あれもこれも協力できるよね!」 海軍大佐に直接聞いた

近年、日本との安全保障協力を深化させている国がカナダです。同国がなぜ日本との協力を深めているのか、在日カナダ大使館駐在武官のワット大佐にお話を伺いました。

共通装備品の「ユーザーグループ」設立も

 また、ワット大佐によると、現在自衛隊が歩みを進めている統合運用についても、カナダ軍の取り組みは日本にとって大いに参考になるのではないかと話します。

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カナダ大使館の駐在武官であるロバート・ワット海軍大佐(画像:カナダ大使館)

「日本は現在、自衛隊の統合運用を強化しようとしています。来年には統合作戦司令部(JJOC)が創設されますが、カナダはこの統合運用能力について長年にわたり培ってきた多くの知見を有しています。これは、日本にとって有用だと考えています。たとえばアメリカは統合運用能力を有していますが、人員の数や組織の大きさが日本とは全く異なります。その点、カナダの統合運用能力は日本が目指すそれと規模感がマッチしていると思います」

 さらに、海上自衛隊が2027年度から運用を開始する予定のイージス・システム搭載艦に装備される艦載レーダーの「SPY-7」は、カナダ海軍の新型戦闘艦であるリバー級駆逐艦にも搭載されることを踏まえ、ワット大佐は「ユーザーグループ」の立ち上げに言及しました。

「SPY-7は世界最新鋭の艦載レーダーであり、現在のところこれを艦艇搭載用に採用することを決定しているのはカナダ、日本、そしてスペインのみです。そこで、この3か国でSPY-7ユーザーグループを作るという計画があります。これにより、運用ノウハウや課題などを共有することができるのです」

 このユーザーグループという発想は、何もSPY-7に限定されるものではないとのこと。「たとえば、我々はヘリコプターに関するユーザーグループ立ち上げについても提案しています」とワット大佐は説明します。

現在、カナダ軍ではベル412EPヘリコプター(カナダ軍ではCH-146『グリフォン』と呼称)を運用していますが、これは陸上自衛隊で運用が開始されたUH-2のベースとなっている機体でもあると言及。「カナダ軍は世界で最も多くのベル412を運用しており、そこで得られた運用経験や知見を共有することができます」と話します。

ベリコプター以外でも、たとえば「リバー級駆逐艦ではエンジンにロールス・ロイス製のガスタービンエンジンであるMT30を搭載します。このエンジンは、海上自衛隊の護衛艦でも採用されているものであり、こちらについては太平洋諸国間のユーザーグループ立ち上げについて検討しています」ということです。

 このほかにも、カナダ軍ではF-35A戦闘機や、無人航空機のMQ-9シリーズなど、自衛隊ですでに運用実績のある装備を今後導入していく予定です。そこで、今後日本とカナダの防衛協力は、共通装備品のユーザーグループという側面からも深化していくことになるのかもしれません。

【これが将来の日加防衛交流につながるかも】カナダ軍が運用する“共通装備”を写真で(画像)

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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