「見たことないカワイイ車!」が、どうして“フツーの軽”になっていった? 偏愛で語るホンダ「トゥデイ」の13年
ホンダの歴代軽自動車のなかでも特に鮮烈な印象を残した「トゥデイ」。ヒットを記録し、さらに“幅広いユーザーを取り込む”進化をしていった結果、なぜか“フツーの軽”になっていったのも事実です。今なお根強い人気を誇るモデルを振り返ります。
「漢の軽」の時代に出てきた「カクカク欧州車っぽい軽」
1980年代中盤の軽自動車は、それまでの随所に「角」があるようなカクカクしたデザインから、丸みを帯びたモデルに移り変わりつつありました。筆者個人的にはカクカクしたデザインも好きなのですが、メタリックカラーのモデルが多く、どことなく男っぽい印象。そんな中で、各社から登場し始めたソリッドカラーの丸いデザインの軽自動車は「新しい時代」を予感させました。
中でも際立って「新しい」「かわいい」と感じさせたのが、1985年に登場したホンダの「トゥデイ」でした。
遠目に見ると、4年前に「モトコンポ」とのセットで登場したホンダ「シティ」にもよく似たデザインですが、シティよりもはるかに背が低くてコンパクト。でも、何かそれまでの軽自動車とはまるで違うポップな印象で、まだ中学生だった筆者も街中で見かけるたびに「見たことがないかわいいクルマが出たな」とトゥデイを見ていたことを思い出します。
――なのですが、大人になり、その頃よりもはるかに知識が上積みされた自分が今、初代トゥデイを見直すとハッとするところもありました。同時期に走っていたフィアット「リトモ」(1978~)に超そっくりではありませんか。
改めて見直してビックリしましたが、当時は日本でそう多く走っていなかったリトモのデザインを多分に真似た部分があると思います。しかしそうであっても、前例がないうえでも「欧州車的なデザイン」をいち早く取り入れ、アプローチしたという意味では、トゥデイはやはり歴史に残るモデルだったと感じます。
トゥデイはかわいさだけでなく、居住性にも優れていました。
エンジンスペースをごくタイトにすることでショートノーズとし、合わせてロングホイールベースとすることで、何よりも室内空間を広く取っているのが利点。また、後部座席をベンチシートとし、これを倒せばさらなる積載力も発揮します。
それでいて、やはりどこかフィアット的なファブリックシートもかわいらしく、女性にウケないはずがないモデルだと思います。
結果、このトゥデイの初代は発売翌年の1986年にグッドデザイン賞を受賞。後に様々な派生を生み出すことになりました。
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