勝てば1兆円「日本vsドイツ 護衛艦輸出“最終決戦”」どっちが有利? 日本は「勝ち目あるのか…?」
実現すれば「約1兆円」規模といわれるオーストラリアへの護衛艦輸出は、日本とドイツの一騎打ちの様相です。すでに同国で実績のあるドイツの提案、日本の提案をそれぞれ比較します。
ミサイルやレーダーの面ではドイツ有利?
MEKO A-210は対艦ミサイルに、ノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペースが開発した「NSM」(Naval Strike Missile)を搭載する予定です。
NSMはアメリカ海兵隊の地対艦ミサイルシステム「NMESIS」に採用されていますし、アメリカ海軍が2022年から建造を開始したコンステレーション級フリゲートにも搭載が決定しています。
オーストラリアは日本と同様、アメリカとの同盟関係を重視しています。有事の際に、アメリカ海兵隊や海軍からNSMを融通してもらえる可能性があるのはオーストラリア海軍にとって魅力的なはずで、もし日本が国産対艦ミサイルの搭載に固執するのであれば、その点は日本にとって不利な要素の一つになるのかもしれません。
また、MEKO A-210はオーストラリア製の「CEA」レーダーや、サーブ・オーストラリアが開発した戦闘システム「9LV」の搭載を前提としています。
オーストラリアは防衛装備品の導入にあたって、国内での雇用確保も重視しています。この点ではMEKO A-210の方が有利に見えますが、オーストラリアは建造期間を短縮するため、CEAや9LVを新型フリゲートの必須要件にはしていません。オーストラリア製のレーダーや戦闘システムの搭載を前提としていない日本の提案が大きく不利になるということは無いと思われます。
勝ち目はあるか日本?
今後オーストラリアはアンザック級フリゲートの後継艦を最大11隻取得し、このうち3隻を輸入、残りはオーストラリアで建造する計画です。仮にドイツの提案が採用された場合、3隻はドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズの造船所で建造されることになります。
ただ同社には、親会社のティッセンクルップから分離されるとの報道があるなど、やや経営が不安定なところがあり、その点は日本にとって、有利な要素となる可能性もあります。
海外メディアはオーストラリアでの建造や同国企業の起用など、通常の防衛装備品の調達という面だけで見ればドイツが圧倒的に有利なものの、安全保障関係強化や先端技術での提携といった、より大きな国益をオーストラリアが重視すれば、日本が有利になると報じています。
提案されている艦に性能差が大きくないだけに、その勝敗は、オーストラリアが何を重視するのかで決まるのかもしれません。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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