「コロナ後」に向けて走り出した2024年の鉄道 値上げやコスト削減の中で見えてきた「次の一手」とは

2024年の鉄道を振り返ると、「アフターコロナ」を模索する一年だったと言えるかもしれません。利用の回復が続く中、各社が利益の確保に向けて「次の一手」に着手しています。

関東と関西で異なる回復傾向

 2024年の鉄道を振り返ると、「アフターコロナ」を模索する一年だったと言えるかもしれません。鉄道利用は2023年度以降、急速に回復していますが、2024年はさらに一段階回復しました。

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客単価向上策の一環として、京阪は「プレミアムカー」の増結を計画している(画像:京阪電鉄)。

 大手私鉄15社(2022年に新京成電鉄を完全子会社化した京成を除く)の2024年度上半期(4~9月)輸送人員をコロナ禍前の2019年度同期と比較すると、定期は16.4%減、定期外は4.3%減、全体で11.5%減でした。

 ただその内訳は、地域によって異なります。関東8社合計は定期が18.6%減、定期外が1.9%減、全体では12%減でしたが、関西5社合計は定期が9.7%減、定期外が12%減、全体では10.7%減でした。関西の定期利用は関東ほど落ち込んでいないものの、定期外がそれ以上に減少した格好です。

 運賃収入は2019年度下期の消費税率改定、バリアフリー料金制度の導入、東急・近鉄・南海などの運賃改定、東急・相鉄新横浜線の開業が影響しており、単純比較はできませんが、総額だけで見れば関東、関西、その他は総じて3%程度の減少にとどまっています。

 収入から営業費を差し引いたのが営業利益です。鉄道事業単体の数字は公表されていないため運輸事業(鉄道、バスなど)全体の営業費を比較すると、営業費は15社合計で4.5%も減少しています。物価や人件費の上昇、ホームドアなど設備投資の増大を考えると、かなりの経営努力です。

 鉄道は動力費や人件費など鉄道運行に必要な費用や、施設や車両にかかる減価償却費など、利用の多寡にかかわらず必要な費用、固定費が大きいビジネスなので、乗客の減少はそのまま利益の減少につながります。鉄道利用はコロナ禍中の予想より回復していますが、これ以上の回復が望めないのであれば、運賃値上げなどで収入を増やすか、コストカットで営業費を減らさなければ利益は回復しません。

 JRや大手私鉄が2022年以降、相次いで運賃改定を申請しているのは、このような背景があります。2024年もJR北海道、JR九州、JR東日本、京阪電鉄が値上げを申請しました。特に国鉄民営化以降、消費税率改定などを除き運賃を据え置いてきたJR東日本が、初の値上げを申請したことは大きな衝撃を与えました。

 関西では定期、定期外ともに減少した利用を補うため、客単価の向上を目指した取り組みが目立ちます。阪急は2024年7月、京都線に同社初の座席指定サービス「PRiVACE(プライベース)」を導入。JR西日本も10月、普通列車に指定席を連結した「Aシート」「うれしート」を拡大しました。京阪の「プレミアムカー」は2025年秋に一部列車に増結を予定しており、京阪間を中心に競争がますます激化しそうです。

【東西で差がはっきり】大手私鉄コロナ前後の「収入・輸送量」の変化を見る(グラフ)

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