「コロナ後」に向けて走り出した2024年の鉄道 値上げやコスト削減の中で見えてきた「次の一手」とは
2024年の鉄道を振り返ると、「アフターコロナ」を模索する一年だったと言えるかもしれません。利用の回復が続く中、各社が利益の確保に向けて「次の一手」に着手しています。
「サービスの共通化」が見えてきた
営業費の削減では、会社の垣根を越えてコスト削減の取り組みが検討されています。JR東日本とJR西日本は2024年7月、車両の装置・部品の共通化に向けた検討を開始したと発表しました。まずはモーターやパンタグラフなどの共通化に着手し、将来的には車両規格の共通化も視野に入れています。
改札システムでも大きな発表がありました。JR東日本は12月、今後10年以内にコスト削減とサービス拡大が可能なセンターサーバー式Suicaのシステムを全面的に導入すると発表しました。
このシステムは現行システムとは併存できないため、全国共通ICカードも新システムに切り替える必要があります。そこでJR東日本は、このシステムを他事業者に提供する方針を示しており、今後は全国的なシステム置き換えに向けた検討が始まりそうです。
同じく5月、JR東日本、東武、西武など鉄道事業者8者が2026年度以降、共通サーバーを使用したQRコード乗車券を共同で導入し、磁気乗車券を置き換えていくと発表しました。独自開発はコストがかさむだけでなく、サービス共通化の妨げになります。8社以外の事業者も検討中とのことで、関東のみならず全国共通の仕様になるかが注目されます。
近年、急速に普及しているのが、クレジットカードのタッチ決済を利用した乗車サービスです。大阪万博を控える関西では、近鉄、阪急、阪神、大阪メトロが2024年10月29日にサービスを開始。先行して導入した南海や大阪モノレールを含め、ほとんどの路線で利用可能になりました。
関東でも、5月に東急、11月に京王、12月に横浜高速鉄道や西武、都営地下鉄、京急が実証実験を開始しており、相互直通運転の対応が進めば、一気に普及する可能性があります。
自動車業界でも経営統合や提携が話題ですが、オーダーメイドの少量生産が多い鉄道業界もシステムや機器の統一は大きな効果が見込めます。各社ごとの特色を愛する鉄道ファンからすれば寂しい話かもしれませんが、2024年は、「サービスの共通化」がアフターコロナのキーワードとして表面化してきた一年でした。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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