東名大和TN、渋滞ワースト独占 対策案が抱える大きな問題
高速道路の「渋滞ワーストランキング」で、実質的にワースト3を占めている東名高速道路・大和トンネル付近。改善対策が進められているものの、そこには大きな問題が。「渋滞名所」の汚名、返上は無理なのでしょうか。
全国の「渋滞ワースト3」、実質的にすべて大和トンネル関係
2016年4月28日(木)、国土交通省より昨年(2015年)の高速道路の「渋滞ワーストランキング(速報)」が発表されました。
首都高と阪神高速を除く路線のうち、「渋滞ワースト3」は以下の通りです。
1位:東名高速・上り・海老名JCT〜横浜町田(渋滞損失時間:134万人・時間/年)
2位:東名高速・上り・秦野中井〜厚木(渋滞損失時間:126万人・時間/年)
3位:東名高速・下り・横浜町田〜海老名JCT(渋滞損失時間:107万人・時間/年)
2位の秦野中井〜厚木間における渋滞は、1位の海老名JCT〜横浜町田間に連続して発生します。つまり全国の高速道路における「渋滞ワースト3」は、実質的に「神奈川県内の大和トンネル付近を先頭にした、東名高速上り線と下り線の渋滞」ということです。
その渋滞原因は「上り勾配」や「トンネルの視覚効果による速度低下」ですが、東名の横浜町田〜海老名JCT間は全国の都市間高速道路で最大級の交通量があり、この区間はそもそも交通容量が不足しているのです。
しかし、東名の混雑緩和などを目的に建設されている新東名は、圏央道と接続する海老名南JCTから東側の計画がまったく未定。つまり、海老名南JCTの東側にある大和トンネルを先頭にした東名上下線の渋滞を軽減するには、東名そのものを改良するしかありません。
渋滞ワーストの東名、改善方法はあるのか?
2015年12月18日、国とNEXCO中日本、神奈川県などによる検討会において、次のような具体的な対策案が示されました。
「渋滞の発生を抑制するために交通集中箇所の交通容量拡大が効果的であり、大和トンネルを中心とした上り線約4km、下り線合計約5.5kmに付加車線を設置する」
手法は、大和トンネル(280m)とその東京側の橋梁部(530m)を上下線とも1m拡幅したうえ、そのほかでは路肩を削るなどして1車線分をひねり出すというものです。
路肩を削り、既存車線の幅を1車線あたり25cm狭くして新たに1車線分の幅を生み出す手法は、東名高速・岡崎IC付近(愛知県)の上下線ですでに実施され、渋滞緩和に大きな成果を上げました。大和トンネル付近もそれに準ずるわけですが、幅が若干足りない大和トンネル内は、トンネルの幅を上下線とも1mずつ広げます。
実は大和トンネル側面のコンクリート壁は二重になっており、内側の壁を取り除くだけで拡幅が可能とのこと。1960年代の建設時、なぜそんな構造が採用されたのか謎ですが、工事はその分、容易です。
総事業費は140億円。「数年後の完成を目指す」(NEXCO中日本)と報道されています。
それでも大和トンネルの渋滞解消は困難か その大きな理由
しかし、これには問題があります。付加車線の設置が横浜町田〜海老名JCT間およそ14kmのごく一部にとどまる点です。これでは渋滞の解消は難しく、限定的な緩和しかできないと断言できます。
上り線は、2003(平成15)年に海老名SAから綾瀬バス停先まで約3kmの付加車線が設置済みですが、その終点でいったん4車線が3車線に減少。そして大和トンネル手前で付加車線が復活し、その先で再度4車線から3車線に減るという凸凹設計なのです。車線が減るポイントでは合流による速度低下が必ず発生し、渋滞の原因になるでしょう。
下り線は、まず横浜町田ICからの合流部が約500m延伸されますが、合流してくるクルマは早く本線に合流したがるものですから、大きな効果は期待できません。大和トンネル前後およそ5kmの付加車線設置はそれなりの効果があるでしょうが、やはり合流ポイントやその先のサグ(道路が下り坂から上り坂になる場所)、あるいは海老名SAからの合流を先頭に渋滞が発生するとみられます。
新東名・海老名南JCT以東の延伸計画もないなか、いったいなぜこのような付け焼刃的な対策案が採用されたのか、理解に苦しみます。
先述した、2003年に設置された東名上り線・綾瀬バス停付近まで約3kmの付加車線について、その効果は「渋滞回数や渋滞距離に改善は見られなかったが、渋滞内の速度が約3割向上し、通過時間が短縮された」(2005年の国交省の調査)とされています。
つまり今回の対策が完成しても、渋滞そのものの発生は抑えられず、通過速度が改善される程度でしょう。
やはり、横浜町田〜海老名JCT間14km全区間の8車線化を強く望みます。それは車線のペイントを引き直すだけで、ほとんど実現可能なはず。戦力の小出しは敗北への道です。
【了】
Writer: 清水草一(首都高研究家)
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で、首都高研究家/交通ジャーナリストとして活動中。
その次に出てくるのは伊勢原JCTの構造問題であろう。
新東名伊勢原北ICと現東名と相互に行き来が出来ない構造のため、新東名の厚木南ICまで行ってUターンして入ることが出来るが、厚木南ICでUターンによる車が多くなり事故が多発すれば、伊勢原JCTの構造の問題が噴出するだろう。
現東名の伊勢原BS 付近にある東海大学病院への緊急出入口を活用してETC のスマートインター(仮称:伊勢原西インター)にすれば解決するのでは。
緊急出入口を活用してスマートインターにすれば、低コストの建設費で伊勢原市への高い経済効果が発揮でき、コストパフォーマンスが高い方法である。
新東名の厚木より東側は、現東名の地下か高架にして片側3車線で建設してそのまま横浜町田ICまで繋げてしまえば良いと思う。
下手に現行東名に手を加えると二度手間になってかえっお金がかかるようになるのではないかと。
4車線に出来るのに、3車線にしたのは「謎です」で済ませないで次回はその辺の取材をお願いします。
路肩の確保の為でしょ?
路肩を削って4車線化するのには賛成ですけど、故障車なんかが出た場合は、今まで通りの3車線に逆戻りします。
高速道路に限らず、走行車線に故障者が停まっている状況は恐ろしいものがありますよね。
首都高に路肩はない。 慣れてしまえば問題ないでしょう。 渋滞が国民経済、福祉へ与える悪影響と暫定的4車線化による効果、費用、リスク等を総合的に勘案して最大公約数的な対策を行うべきだろう。 日本では車両の幅が2.5Mに規制されているが、アメリカのトラック等はこれより広い。しかし、フリーウェイの車線幅は日本の高速道路より狭い。 ペイント4車線は最大公約数一番近い方策だと思う。4車線とし、路肩側車線は通常じは路側帯とし、渋滞が発生しそうなときに4車線に切り替えることも一つの方策。 洪水対策の遊水池をまねて海老名S.A.の駐車キャパシティを増やす、厚木大和トンネル間に出口専用の簡単なインターを設けるのも有効かもしれない。大和トンネル前のNシステムを撤去しない当局の愚かさには怒りを通り越したものがある。 国民のためのクリエイティブな発想は役人組織、警察組織からは出てこない、なぜなら現状維持、過去の踏襲が彼らの保身につながるからだ。 国民が動かしていかなくては。 清水さん頑張れ。
航空機事故が元で、頑丈な構造にしたはずでは?
> 通過速度が改善される程度でしょう。
多くの人にとって、通過速度が向上して時間短縮できれば、それは大きな効果ではないでしょうか? 全く動かず時間の読めない渋滞よりも、距離は長くても流れている渋滞の方がナンボかマシです。時間短縮の対価として高速料金を支払っているのですから。
どれだけ通過時間が短縮されるのか書かれてないのが残念な記事です。
このコメントに全面的に同意。
「効率性」を唱えるなら、「到達時間の短縮」は十分な成果。
渋滞回避に躍起になって住宅街の抜け道を爆走す人や、
高速道路をサーキットか何かと勘違いしている人には、
そういう考え方が、そもそも頭の中に無い。
「渋滞の解消」以外の答えを認めないなら、
「あなたが車に乗らないで渋滞減少に貢献してください」というだけの話。
というより、大和トンネル上りの渋滞の原因は事故が絡んでいると思います。
特に上りにはNシステムがトンネル手前にあるからそれが事故を誘発しているかと思います。
因みに東名から東京都心や横浜都心部に出るときは海老名から新湘南バイパスに出て1号使った方が早く、相模原や埼玉方面なら素直に圏央道を使った方が良いと思います。
バイク乗りなのだけど、緊急時の逃げ場がどんどん減っていくので
路肩が余ってるからと何でもかんでも車線増というのは勘弁して欲しい。
この記者は完全に乗用車目線なんだよね、大型車(トラック)等でも車線増により車線幅が狭まると
平均車速が落ちて反って渋滞に繋がる場合もあると思うんだよね。
その区間の最低速度を140キロに設定し、それ以下で走る車を「進路妨害」で赤キップを切ればいいのです。
前から疑問に思いますが、何故、上り坂でブレーキを踏むのか?何故、アクセルを踏まないのか?
中央道の小仏トンネル前後区間の様な急坂&急カーブ地帯ならまだしも、時速180キロで走っても何ら問題のない区間で上り坂でブレーキを踏む軟弱野郎の根性を叩きなおすべき。
海老名JCTと横浜町田ICの間の全区間に渡り暫定片側4車線にする必要があるという清水さんの意見に賛成です。
今後、外環ができて北部方面からの車が東名に流入したり、首都高速横浜環状北西線が横浜青葉ICまでつながって、今まで保土ヶ谷バイパスからの流入だけだったのが両方から流入したりと、さらに東名の通行量の増大が見込まれます。その際には暫定片側4車線の区間をさらに延長したり、伊豆・箱根・湘南との行き帰りの車はなるべく東名を通らないルートに誘導していくことが必要になると思います。