「なんでこんなに窓が曇ってるの?」 悩む鉄道事業者 新品に取り替えても消えないモヤモヤ

アメリカや日本のJRの一部でも、やたら“窓が曇った”車両を見かけることがあります。新品への置き換えを進めても、また曇ってくる可能性がぬぐえない理由がありました。

ガラスは使わない、いや使えない

 それでは、NJトランジットはなぜポリカーボネート製の窓に固執し、日本の多くの列車のようにガラスを取り付けないのでしょうか。その理由は、アメリカ運輸省の傘下組織の連邦鉄道局(FRA)が設けている鉄道車両の安全基準を満たすためです。

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アメリカ東部ニュージャージー州を走るNJトランジットの2階建て客車(大塚圭一郎撮影)。

 FRAは鉄道車両の窓について「物体が当たった場合でも乗客と乗員が負傷しないような保護性能を持つ最低限の基準を満たすこと」などの要件を定めています。車両の種類や製造された時期などによって適用される基準は異なりますが、アメリカの鉄道当局職員は「一般的に列車に向かって投石があった場合や、車内で客が暴れて窓を蹴った場合にも壊れて乗客や乗員がけがをするのを防げるだけの耐久性能が求められている」と話します。

 通常のガラスでは投石があった場合などに割れてしまい、飛散してけが人が出る恐れがあるため、基準を満たせないというのです。

 このため、衝撃への耐久性が優れたポリカーボネートがNJトランジットにとどまらず全米鉄道旅客公社(アムトラック)、地下鉄、近郊鉄道などの車両で広く用いられています。実際、マナーが悪い乗客がいるアメリカの鉄道車両では傷付けられたり、落書きされたりしている場合もしばしば見かけました。

 アメリカの鉄道に納入している日系鉄道車両メーカーの関係者は「当社が製造している車両はポリカーボネートの窓の内側に保護フィルムを貼り付けており、油性ペンなどで落書きされた場合にはフィルムをはがして交換すれば良いようにしています」と打ち明けていました。

 そんな背景からアメリカの鉄道ではポリカーボネート製の窓が普及していますが、特に古くなった場合には乗客の視認性を犠牲にせざるを得ないのが玉に瑕です。

【言われてみれば…】「曇った窓」の風景(写真)

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