お金かかりすぎ「開発中止を」 それでも完成させた国産エアバッグ 誤作動しない確率99.9999%以上!?
今や自動車の標準装備となっている「エアバッグ」。日本で初めての国産エアバッグはホンダが開発したものでした。しかし、ここに至るにはじつに16年もの歳月と、技術者たちのアツい思いのこもった物語があったのです。
「お前たちが使う金くらいでホンダが潰れるわけがない。絶対に諦めるな」
それでも、そこから数年経過しても劇的な研究成果は上がりませんでした。さすがに「会社に申し訳ない」と思う4人の研究者たちでしたが、そんな彼らに研究所の所長が放った一言はこうでした。
「お前たちが使う金くらいでホンダが潰れるわけがないだろう。絶対に諦めるな。必ずエアバッグシステムを実現させろ」
そんな叱咤激励を受け、ついに4人の研究者たちは研究開発を始めてから16年の時を経て、自分たちに課した「極限の信頼性」を持つエアバッグシステムを実現。その信頼性はなんと99.99999%。世界でも例のない数値であり、100万回に1回の故障率という極限の信頼性を達成。1987年にホンダのレジェンドに初搭載させ、これこそが国産車初のエアバッグシステムになりました。
以降、ホンダが開発したエアバッグシステムは世界中の自動車メーカーに影響を与え、1990年代以降、急速に普及。ご存じのとおり、今日ではクルマの安全機能として定着しました。
また、このエアバッグ開発以降も、ホンダは独自のシステムを続々と開発していきます。1990(平成2)年には「フロントウインドウに沿うように展開する、トップマウントのエアバッグシステム」を助手席用に開発。のちには多くの自動車メーカーがこのトップマウント式のエアバッグシステムを採用するようになりました。
1998(平成10)年には、衝突速度によってエアバッグの展開速度が変わる「2段式インフレーター」や「サイドエアバッグ」を開発。さらに2002(平成14)年には「サイドエアカーテンエアバッグシステム」を、2008(平成20)年には運転席に乗る人の様々な体格に対応する「連続容量変化タイプのエアバッグシステム」を開発。
後には「二輪車用」や「事故の際の歩行者の衝撃を和らげるポップアップフードシステム」なども開発し、今日も安全性能を高める技術が惜しみなく投入され続けています。
その礎となったのは言うまでもなく、16年もの時間と膨大な費用を費やし開発を続けた4人の研究員の魂と、それを密かに励まし続けたホンダの体制でした。現在、多くのクルマに搭載されている国産車のエアバッグシステムには、開発時のホンダに、このような情熱が詰まったアツい秘話がありました。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
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