1万トン超え「デッカイ北極向け砕氷研究船」まもなく誕生! 日本の将来担う船、JAMSTECの見解は?

2025年3月に進水予定の北極域研究船「みらいII」。同船は日本初の砕氷機能を持つ研究船として建造されていますが、同船が果たす役割は単に北極海の観測にとどまらないようです。じつは国家戦略にも直結するスゴい船でした。

海氷面積の減少にはメリットもあるって?

 とはいえ、温暖化による北極海の海氷面積の減少は、経済的にはプラス要素となる可能性もあります。北極海を一般の商船が航行できるようになれば、アジア―ヨーロッパ間の航行日数の短縮が期待できるでしょう。

Large 20250127 01

拡大画像

北海道周辺海域で活動するために海上保安庁が保有する巡視船「そうや」。南極観測船としても用いられた初代「宗谷」の名を受け継いでいる(画像:海上保安庁)。

 商船三井によれば、東京―ロッテルダム航路で比べた場合、その距離はスエズ運河経由では約2万kmなのに対し、北極海経由だと約1万3000kmで、航行距離は30%以上短くなると試算しています。現在は、ロシアの沿岸域が北極海航路ということで使われていますが、さらに海氷が減れば北極海の中央や北米大陸側も使えるようになることが期待されています。

 ただし、調査観測がしやすくなるということは、新たな生物資源や有用な物質の発見も考えられます。そうなると、漁業資源のより一層の管理など、北極海を保全しつつ利用していくための国際的な枠組みやルール形成を行っていくことが必須になるでしょう。

 ただ、これまで日本は砕氷研究船を保有していなかったため、北極海観測は観測時期や海域が限定される耐氷船の「みらい」か、設備の制限や政治的リスクがある他国の砕氷船を利用するしかありませんでした。北極海のデータを収集し、国際的に北極研究をリードしていくためにも、新たに北極域研究船を建造することは必要だったのです。

 赤根部長は「科学的な観点だけではなく、社会経済的な観点でも北極海にきちんと日本として関与していく必要がある」と強調しています。

 そうした中、既存の『みらい』では海氷が最も減る9月ごろでも、北緯75度ぐらいまでしか行けないのに対し、『みらいII』であれば季節的にも海域的にも海氷が存在している時期・場所で観測を実施できることが強みと建造の狙いを説明していました。

 また本格的な砕氷能力を持つ『みらいII』のメリットとして、「海氷の少ない時期であれば、北緯90度の北極点付近まで行けるだろうと考えている。北緯75度から北緯90度までは、単純な距離で1600kmくらい。つまり『みらい』と比べて1600km以上もの距離を北上できるだけのスペックを持つということになる」とも話してくれました。

【船内に実験室やコールドルームが】これが北極域研究船「みらいII」の船内です

最新記事

コメント

1件のコメント

  1. 砕氷艦「しらせ」は

    文部科学省の予算で建造され

    海上自衛隊所属だが?