いいクルマだったのに…忘れられないあの顔「ホンダ e」はどこへ 消えた意欲作

今でもたまにその姿を見かける丸目の無表情のクルマ「ホンダ e」。ホンダ初の量産EVとして登場した同車はなぜ、短期間で販売を終了することになったのでしょうか。

よりによってコロナ禍真っただ中での発売

ホンダが2025年1月に「Honda 0 シリーズ」と銘打った新たなEV(電気自動車)シリーズのプロトタイプ2車種を世界初公開するなど、EVシフトを鮮明にしています。その一方、少し前に発売された同社のEVも、都心部でたまに見かけます。丸目のヘッドライトが印象的な無表情のクルマ、「ホンダ e」です。

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日本国内での販売期間はわずか約3年と短命に終わったホンダ e。丸目っぽいライトが特徴(画像:ホンダ)

同車は「2025年までに欧州で販売する全ての車両の電動化を目指す」と掲げていたホンダが、特に力を込めて開発し2020年に発売したホンダ初の量産のEVモデルです。

結果的に約3年という短命で姿を消すことになったホンダ eですが、筆者個人的に、むしろ味方をしたくなります。あの「丸目の無表情」が今持って忘れることができません。そんなホンダ eの強みと弱点を改めて振り返ります。

同車は「メーカー名」を初めて車名に取り入れたことからも、力の入れ具合がうかがえるものでしたが、販売は苦戦が続きました。当初の日本国内の販売計画台数を年間で1000台としていたものの、実際は3年間に1800台ほどで、計画の6割ほどしか売れませんでした。

ホンダ eが一般に公開されたのは2019年春、スイス・ジュネーブで開催されたジュネーブモーターショーでのことでした。この際はプロトタイプの出展でしたが、おおいに注目を集め、ホンダは早くも「2019年後半から生産開始する」と発表します。

また、2019年夏にはドイツ・フランクフルトモーターショーで量産モデルを世界初公開し、2020年初夏の発売を発表しました。発売前にして、世界的権威のあるプロダクトデザイン賞(自動車)において「ベスト・オブ・ザ・ベスト賞」を受賞、さらにスマート・プロダクト部門においても、「レッド・ドット・デザイン賞」を獲得しました。後述する様々な斬新機能を含め、これだけシンプルでかわいい1台に落とし込んだことが大きく評価されました。

ただし、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広がった時期で、日本での発売は10月30日となりました。コロナ禍の影響もあってかホンダ e登場のインパクトはだいぶ弱まったようにも映りました。

また、日本国内価格はホンダ eが450万円強、上級グレードのホンダ e・アドバンスが495万円でした。特に日本国内で言えば、多くの人にとって最優先すべきは「かつての日常を取り戻すこと」だったことを踏まえると、いくら斬新でかわいいEVとはいえ、価格的に購入する人が限定されたのではないかと推測します。

航続距離に関しても不安要素がありました。満充電で走れる航続可能距離は259〜283kmと、当時販売されていた他メーカーのEVに劣りました。

「都市型コミューター」と銘打ち、長距離走行については割り切って開発した面があったとしても、それでいて価格面では負けているホンダ eは相対的にユーザーにとっての購入の必然性を遠ざけてしまい、結果がふるわなかったようにも感じます。

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