「日本じゃムリ」を打破! 初の「フルフラット席」高速バスを、高知の小さなバス会社が実現しちゃったワケ 地元企業と試作約10年

日本初「フルフラット座席バス」高速バスが正式に発表。ローカルなバス会社「高知駅前観光」が地元の製造業を巻き込み、国土交通省のお墨付きも得て発表に至りました。実現不可能と考えられていた業界の“常識”を打破したバスはどう誕生したのでしょうか。

国内初の座席を生み出した「高知のバス会社」

 2025年1月30日、高知県のバス事業者「高知駅前観光」が新型座席「ソメイユプロフォン」を発表しました。フランス語で「深い眠り」を意味する名称が示す通り、国内で初めて、夜行運行時にフルフラットになる高速バス座席です。フルフラット時には、まるでバス車内に二段ベッドが並んでいるように見えます。

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高知駅前観光の東京-徳島・高知線「スマイルライナー」。ソメイユプロフォンは同路線でモニター運行を行う(画像:高知駅前観光)。

 これまで、法令などの制約から実現不可能と考えられていたフルフラット座席が誕生した背景を探ると、「気概」「頑固」でも「開明的」という土佐(高知県)の県民性が浮き彫りとなります。

 同社は、戦後間もない1950年にタクシー会社として誕生し、その後、貸切バス事業も開始します。バス業界は長らく、地域の路線バスや高速バスなど乗合バス事業を中心に、貸切バスも兼業する「総合型バス事業者(いわゆる既存事業者)」と、貸切バスのみを運行する「貸切専業者」に分かれていました。つまり、高知駅前観光は後者の中の老舗です。

 前者は、今でこそ路線バスの赤字に苦しむ地方部の会社も多いものの、高度経済成長期は「バスの黄金時代」であり十分な収益を上げるとともに、航空会社の総代理店業務や民放テレビ局への出資など条件のいい付帯事業を数多く展開し、地元の名士企業となりました。ちなみに航空総代理店とは単なる販売代理店ではなく、空港での旅客ハンドリングなど航空会社の業務一式を地元の会社が請け負う仕組みです。

 その様子を横目に眺めるしかなかった高知駅前観光は、2001年、悲願の乗合バス参入を果たします。高知市内から高知空港へのバス路線を開設したのです。

 独占状態ゆえに既存路線のサービス水準が低かったことに憤った当時の梅原國利社長(現会長)が調整を重ね、突破不可能と思われた「業界のオキテ」を乗り越えました。もっとも、当初は既存路線が発着する高知駅などには停留所設置を認められず、大赤字のスタートでした。同路線は、その後、既存事業者と協調を図りつつ成長し、現在では経営の屋台骨を支えています。

【座席がベッドに!】これが日本初「2段式フルフラット座席」です(写真)

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