「日本じゃムリ」を打破! 初の「フルフラット席」高速バスを、高知の小さなバス会社が実現しちゃったワケ 地元企業と試作約10年
日本初「フルフラット座席バス」高速バスが正式に発表。ローカルなバス会社「高知駅前観光」が地元の製造業を巻き込み、国土交通省のお墨付きも得て発表に至りました。実現不可能と考えられていた業界の“常識”を打破したバスはどう誕生したのでしょうか。
“豪華バス”じゃないから、ビジネス的にうまみ
2002年に高速ツアーバスが容認されて以来、同社を含む多くの参入がありました。ちょうどインターネット普及の時期と重なったことで、特に夜行路線については「ウェブ上でバス(座席や付帯サービス、安全への取り組みなど)を比較し、バスを選んで予約する」市場となりました。
電話予約が中心だったころは、「狭いが、寝てしまえば快適」というような個性的な座席のメリットとデメリットを口頭で説明し利用者に理解してもらうのは困難でした。しかしウェブ予約であれば、空間のサイズや乗り込む際のコツまで、画像や動画で示し、他の利用者のクチコミまで参考にしながらバスを選んでもらうことができます。
また、快適性と収益性の両立を図った点も今日的だと言えます。
「バスを比較して予約する時代」を迎えて約20年間、各社の上級座席は、座席定員を絞ることで一人当たりの専有面積を最大化し、座席の大型化、個室化を目指してきました。しかし、乗車定員がわずか10人少々では、いくら客単価を上げても収益性に限界があります。
各社は、定員が多い汎用車両や収益性が大きい短・中距離の昼行路線まで車両カラーリングやポイント制度を統一することでブランド化を図り、いわばその広告塔として上級座席を活用してきました。ところが、慢性的な乗務員不足により、広告塔のためにだけバスを運行する余裕はなくなっています。
「ソメイユプロフォン」はトイレ付き車両に最大24席設置できます。夜行高速バス標準車両(3列独立席、トイレ付き)は28席ですから見劣りしません。
高知駅前観光は、「ソメイユプロフォン」を全国のバス事業者に提供(販売)していく方針です。車両の一部にだけ設置することも可能なことから、車内前方は既存の夜行用リクライニング座席、後方に新座席という選択も可能です。
かつて明治維新に際し、頑固で豪快に見える土佐の人々が、気概に溢れつつ冷静に時代を読み、歴史の転換点に大きな役割を果たしたように、高知のスピリットを体現した新座席が高速バス業界に新風をもたらすか、楽しみです。
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