「船に乗らない“船乗り”」現実に!? 見た目キャンピングカーな“ハイテク拠点”公開 “船の仕事”はこう変わる

日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の一環で、ある“車両”がお披露目されました。一見するとキャンピングカーのような牽引型の車両ですが、実は「走る操舵室」といえるもの。船業界の未来像がここにありました。

無人運航は「将来の目標」 その前に実現することとは?

 ダッシュボード画面では、船上の航海計器で計測された位置や速力といったセンサー情報、発生中のアラート情報などを個船ごとに確認できます。周辺海域の気象情報や航行警報、海難事故情報といった安全に関わる情報を確認しながら、航海計画を作成し、無人運航船に送ることも可能です。さらに収集した、データを使って他船との衝突危険領域や海域の交通密度などを分析するコンテンツも提供しています。

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EVからの給電で陸上支援センターを稼働させることもできる(深水千翔撮影)。

 後席には機関長が着座。動力源である推進力と電力の概要を一目で確認することができるよう陸上版の機関監視盤を通して、各船の機関システムの遠隔監視を行います。

 ディスプレイ上にはエンジン回転数やプロペラの翼角といった船のスピードを保つために重要な情報を表示。さらに燃料油、潤滑油、冷却清水など各供給システムの健全性と稼働状況を確認できます。燃料は赤、冷却清水は青という風に船の機関室にある実際の配管ラインの色と合わせて、状況を即座に把握しやすくしました。

 佐藤課長は「将来的には無人運航を目標にしているが、まずは船上にいる機関士に対して、必要に応じて遠隔で支援を行うことで、機関士1人体制でエンジンの機能を維持することを目指している」と話します。

各社まとめて面倒見る?

 この移動型と常設型の陸上支援センターは情報を共有しているため、一方の拠点で何らかの問題が発生した場合は、もう一方の拠点が引き継ぎます。これにより連続した遠隔支援が可能となり、運航の信頼性と安全性を確保しました。

 井上部長は「事業化に当たってはソフトウェアベースで作っており、機能を切り出して順次リリースしていきたい。ルール化の部分が大きな課題になるので、航行の支援ができるソフトウェアの提供から始め、顧客のニーズを汲みながら最適なものにアップグレードしていく形を取っていく」と意気込みます。

 海野常務理事は将来像について「陸上支援センターは船舶運航を担う船社か船主が導入するのではないかと思っている」と述べた上で「それを踏まえると各社1つずつ持つというのが普通考えられるが、内航海運は中小企業が多く、こうした設備を持つのは困難。運用モデルとしては地域で取りまとめて1つの陸上支援センターを作り、船舶を運航するという形が生まれるのではないか」と話していました。

【写真】これが「船乗りの“勤務先”=キャンピングカー改造車」です!(写真)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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