「これを八甲田と思わないで」 予想外だった天候 それでも自衛隊が演習に勤しむワケ
日本屈指の豪雪を誇る青森県の八甲田山系。陸上自衛隊第5普通科連隊は毎年、積雪寒冷地における戦技向上などを目的に、冬季に八甲田演習を実施しています。その様子を、スキーを履いて密着取材しました。
陸上自衛隊が持つ対雪装備はどんなもの?
雪原を克服する装備は独特です。個人装備ではスキーやかんじきなどがありますが、行進用のスキーはかかとが浮くクロスカントリータイプになっています。裏面にはウロコ加工が施されており、支給されたそれは前進グリップが効くようになっていました。
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ウン十年ぶりにスキーを履いた筆者は、第5普通科連隊の練度に及ぶべくもなく、1.5km前進した場所で早々に引き返しました。別経路を雪上車ではなく高機動車で進み、後藤伍長銅像前にて英霊に対する敬礼を取材しました。
なお、八甲田山遭難事件を契機に旧日本陸軍が積雪寒冷地の戦技を研究したことが、日本でスキーが広まった契機のひとつとされています。1910(明治43)年11月、オーストリア=ハンガリー帝国のテオドール・エードラー・フォン・レルヒ少佐が、日露戦争に勝利した日本陸軍を研究するため来日します。
レルヒ少佐はアルペンスキーの第一人者だったこともあり、1911(明治44)年1月12日からスキー指導を開始。この日は日本スキー発祥とされ「スキーの日」とされています。
さて、雪中行軍独特の装備が「アキオ(ahkio)」です。これはフィンランド語を由来とする運搬用ソリで、小隊に1個配備されます。エンピ(シャベル)、ストーブ、シート、真水の携行缶などを積載するため、総重量は80~100kgにもなりました。4人で連結して引っ張ることが基本ですが、スキー装着では登るのも下るのも独特な技能が必要になります。
スキーやかんじきを履けばかなりの雪原でも踏破できますが、やはり機械化は大切です。積雪寒冷地専用の乗りものとして、陸上自衛隊は雪上車(78式、10式)と軽雪上車(スノーモービル)を所有しています。ただし積雪地の部隊にしか配備されないレア装備です。
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