「エンジンの位置ヘンでも売れました」な珍輸送機、なぜこの形に?→それも納得な超スペックとは
エンジンを翼上に設置したユニークな形状の輸送機たちのなかで、最初に実用化されたモデルが、旧ソ連の「An-72」です。どのようなメリットがあったのでしょうか。
ボーイング「YC-14」の方が設計完了は早かったが…
ジェット輸送機のエンジンは、多くが主翼の下に吊り下げられています。そのようななか、翼の上にエンジンを載せたユニークな配置を持つ輸送機が、歴史上いくつか生み出されました。そのなかで最初の実用機として生産された機体が、旧ソ連のアントノフ設計局で設計された「An-72」です。どのような機体だったのでしょうか。
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An-72を含め、このようなエンジン配置方式「USB(Upper Surface Blowing)」を採用した機体は、1970年代から80年代にかけて製造された輸送機でトレンド化していました。
こうした形状にした理由は、エンジンの排気を主翼上面に沿わせることによる揚力の増加にあります。これらの機体はどれも「コアンダ効果」と呼ばれる、流体が曲面に沿って流れるときに方向が変化する性質を応用し、揚力の増加を狙っています。
USB方式を最初に採用したのは、ボーイングYC-14でした。この機体は米空軍がC-130輸送機の後継機としてボーイングに試作機を発注したもので、ジェット機ながらSTOL(短距離離着陸)性能を備えて高速巡航と前線飛行場での高い運用能力を狙ったものでした。
YC-14は2機が製作され、評価試験が行われました。そこでは空軍の要求仕様を全ての項目において満たしていましたが、過大な高性能を盛り込んだため機体価格が高くなってしまったことと空軍側の要求の変化に伴い採用されることはありませんでした。
そして、試作のみに終わったYC-14から、やや遅れて登場したのがアントノフ An-72です。同機が登場した時期は、YC-14が初飛行した1976年の1年後の1977年でした。そういった経緯から、An-72はYC-14を参考にして開発された機体と考えられています。
An-72はソ連空軍の軍用輸送機として開発されました。最大10tの貨物を搭載することが可能で最大離陸重量は34.5t。これは日本のC-1輸送機に近似する機体規模の輸送機です。
また同機の特徴である、USB方式の採用理由は、STOL性能の向上以外にもありました。
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