もはや別物やん! 進化の最終形態は「亜音速ジェット機」イギリスを救った戦闘機の知られざる“その後”

イギリス人なら知らない人はいないといっても過言ではない戦闘機、それが「スピットファイア」です。同機は第二次大戦勃発前に登場し、大戦の全期間にわたって用いられたのち、戦後はなんとジェット戦闘機にまで進化していました。

亜音速飛行可能な「スピットファイア」の末裔

 しかし、スピットファイアの系譜はまだ続きます。航空技術の発展により後退翼の適用が可能となると、アタッカーを原型とした性能向上型が開発されることとなりました。それが、スピットファイアの系譜の最終形となる「スウィフト」です。

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イギリスの救世主「スピットファイア」はその人気の高さから現在も数十機の飛行可能機が存在する(関 賢太郎撮影)。

 この機体はもはや原型のスピットファイアの面影を完全に失っていますが、最高速度1187km/h(マッハ0.96)を記録し、音速の壁に迫る能力を持つに至っています。なお、スウィフトは空力的な問題を抱えていたことで事故が続発。欠陥機と見なされたものの、イギリス空軍は本機を採用し、実戦配備しています。

 さらに、スウィフトを基にした超音速飛行対応型の計画も存在し、新しい「エリアルール」を適用することで超音速飛行を実現しようとする試みもなされましたが、こちらは実現には至りませんでした。

 他国に目を転じると、レシプロ戦闘機をベースとしたジェット戦闘機の開発例は、ソ連のYak-15(Yak-3原型)やアメリカのFJ-1「フューリー」(P-51原型)などがあります。しかし、これらは第二次世界大戦中に初飛行した比較的新しい設計の機体であるのに対し、スピットファイアの初飛行は1936年と、大戦勃発よりさらに3年前に遡ります。これは、戦闘機の設計が低翼単葉・引き込み脚といった第二次世界大戦世代のスタンダードに移行し始めた黎明期に誕生した機体であったことを意味します。

 このように、基本設計が古いスピットファイアが、その枠組みを超えてジェット化され、さらには音速の壁に迫るほど進化したことは、レシプロ戦闘機の歴史においても極めて稀有な事例であると言えるでしょう。

 世界大戦と航空機の飛躍的進化という激変する環境の中で、技術革新の波に乗りながら進化を続けたスピットファイアの系譜は、航空史の視点からも特筆すべきものだといえるのではないでしょうか。

【似ても似つかない…】これが「スピットファイア」の血を引くジェット戦闘機です(画像)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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