「歓迎します」→他国艦に向かってズドン! “礼砲“はなぜ始まった 今のルールは「経費節減」が目的だった!?
自国に来港した艦艇を歓迎するため「礼砲」という空砲を撃つ習慣が世界の海軍にはあります。なぜわざわざ砲を撃つようになったのでしょうか。
そもそもなぜ礼砲をするようになったのか…
礼砲の起源は諸説ありますが、14世紀頃から行われていたというのが有力です。軍用帆船や武装商船に大砲が載せられるようになった頃には、既に欧州では礼砲のほか祝砲、弔砲などが習慣化していたといわれています。

当時の艦砲は砲口から弾を込める前装式で、火薬も黒色火薬のため、発射完了するまで時間を要しました。それは、砲身内に弾が込めてなければすぐに戦闘態勢には移れないということで、沿岸砲台などに近づく前に装填済みだった実弾を撃ち尽くすことで、相手に敵意がないことを示し、沿岸砲台もこれに答え、軍艦1発の砲弾に対し3発の返礼を撃つことで、友好的な相手を迎えました。
当初、礼砲と祝砲は奇数、弔砲は偶数という大雑把な決まりがありましたが、明確に空砲を撃つ回数に意味を持たせ、国際習慣化させたのはイギリスでした。主な目的は、なんと経費節減です。
1660年に王政復古したイギリスは財政難だったため、それまでは装填済みの全ての大砲を発射する必要性があった礼砲を、最大21発までと定めました。当時の軍用帆船は砲の数が60~100門と多かったため、この決定は多くの実弾や火薬を節約することになりました。
そして、世界の海軍で礼砲や陸上行事での祝砲が習慣化すると、21発は一般的に「国家や国家元首」に捧げる礼砲の場合のみに行われるようになり、首相や国賓に対しては19発となります。閣僚などの政治家や軍の大将クラスの人に対しては17発、と数が減っていきます。なお、艦艇への礼砲に関しては、国を代表しての訪問が中心ですから21発が基本です。
現在では、各国が引退した大砲を再整備して儀礼用として使用している国が多く、また構造上実弾を発砲できない礼砲専用の大砲を使用している国もあります。
Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)
なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。
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