「関門トンネル」67歳…今後どうする? 老朽化する“世界初の海底道路” 無料化は無理?

老朽化が進む国道2号「関門トンネル」の今後の在り方について、検討委員会による中間とりまとめが公表されました。

岐路に立つ「関門トンネル」

 世界初の海底道路とされる「関門トンネル」で老朽化が進んでいます。2025年3月17日、3回目の「関門トンネルにおける今後の維持管理・修繕に関する検討委員会」が開催され、それまでの議論をまとめた「中間とりまとめ」が4月18日に公開されました。

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国道2号「関門トンネル」の北九州側車道坑口(乗りものニュース編集部撮影)。

 関門トンネルは1958年、山口県下関市と福岡県北九州市を隔てる関門海峡に開通した国道2号のトンネルです。1973年には並行して高速道路の関門橋が開通していますが、それ以後もトンネルは日本道路公団の有料道路として存続し、NEXCO西日本に引き継がれてから2025年9月で20年が経過します。料金徴収期限は今年の9月末とされていることから、今後の在り方について検討が必要とされていました。

 2024年12月に開催された1回目の検討委員会では、現在の維持管理状況、利用状況、事故や渋滞の状況などが共有されました。1日約4800tというトンネルへの湧水を排出する排水ポンプ(計17台)は、最も古いもので29年が経過しているなど、設備も年月を経ているといいます。

 構造物自体の老朽化も進んでおり、一部の床版(舗装が載る道路の床板部分)については、床版下面で内部の鉄筋を超える位置までコンクリートの中性化が進行していることが判明。今後、一部で床版の取替えなど大規模な更新が必要と判断されています。

 また、交通状況については、トンネル内部は渋滞していないものの、NEXCOの管理道路で唯一、ETCが導入されていないこともあり、トンネル両端の料金所で渋滞が発生しているといいます。また内部は対面通行のため、反対車線へはみ出す渋滞事故が毎年発生していることから、道路機能の向上も必要とされています。

 しかし一方で、交通量は減少傾向にあるほか、物価上昇によって管理コストが2012年度と比較して「約8割」も増加しているといいます。

 関門橋と関門トンネルだけで担っている関門間の交通は、一方が通行止めになると一方に交通が集中し、凄まじい渋滞が発生するケースがあります。このため、関門海峡をまたぐ第三のルートとして「下関北九州道路」の事業化に向けた取り組みが進んでいますが、もし開通すれば関門トンネルの交通分担率が大幅に下がるのは避けられません。料金徴収期限を前に、トンネルの維持管理の在り方は岐路に立っています。

 今回公表された中間とりまとめでは、将来的にトンネルの予防保全や更新などを計画的に実施していく必要があり、そのために多額の費用を要するため、利用者負担を継続し、持続可能な管理を行っていく必要があるとしています。また、資材費・労務費の上昇、環境の変化には、計画を適宜見直しつつ、料金の見直しも検討していく必要があるとしています。

 道路そのものについては、キャッシュレス化による料金所での渋滞緩和、車線区分構造の設置といった対策を提言。さらに、地域活性化や老朽化するインフラ管理への理解促進といった観点から、土木遺産としての価値を生かしたインフラツーリズムなども引き続き積極的に取り組むべきとしています。

【結構ボロボロ…】関門トンネル「内部の状況」を見る(写真)

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