空の戦いが一変!?「ステルス空中給油機」米軍の次世代プロジェクト 睨むのは中国との将来戦か
現代戦において作戦遂行上、不可欠な存在となっている空中給油機。「空飛ぶガソリンスタンド」と揶揄される同機について、アメリカ空軍ではステルス性を取り入れた次世代機を構想しています。長所と短所の双方を見てみました。
ステルス空中給油機があると戦い方も一変するか?
NGASがレーダー反射断面積(RCS)を極小化し、敵のセンサー網に捕捉されにくい「ステルス性」を獲得することに成功すれば、空中給油機の生残性は劇的に変わるでしょう。F-22やF-35といったステルス戦闘機と同様に、より前線に近い位置まで進出しても安全に給油を行うことが可能になるため、これまで制限のあった長距離の侵攻作戦や深部打撃の柔軟性が格段に向上します。

実際、中国人民解放軍のA2AD(接近阻止・領域拒否)戦略は、アメリカ軍の空中給油機を「可能な限り前方で止める」ことに重点を置いていると考えられます。これに対抗するには、給油機自体が被探知性を抑え、ステルス戦闘機の進出に「追随」できる能力を持たねばなりません。NGASは、まさにその「追随型給油機」の最有力として期待されています。
とはいえ、NGASには課題も山積みです。最大のネックはそのコストです。現在のKC-46Aのように、民間機を改造するやり方では量産効果を得やすく、調達単価を抑えることが可能です。しかし、NGASのような専用設計、しかもステルス性を取り入れた機体構造となると、コストは天井知らずに跳ね上がる可能性があります。B-2爆撃機やF-22戦闘機がたどった「少数ゆえの高価格」の轍を踏まない保証はどこにもありません。
現時点で、NGASはまだ構想段階のため仕様もいまだ不明瞭で、プロトタイプすら存在しません。ですが、21世紀の空中戦力が「分散・秘匿・即応」の方向へ進化していくとするならば、空中給油機にも同様の進化が求められるのは必然と言えるでしょう。
ただ、もしNGASが実用化されればアメリカ空軍の将来が一変するのは確かです。それだけの可能性を秘めていることだけは間違いありません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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