ロシア戦略爆撃機インドネシアに駐留か? 候補の基地あるトコ「米豪の軍事拠点、スグ近くじゃん!」
2025年4月、インドネシアに対し、ロシアが自軍の戦略爆撃機を駐留させてほしいと打診したと、イギリスの安全保障系メディアが報じました。なぜロシアは遠く離れたアジアの非同盟国に白羽の矢を立てたのでしょうか。
戦略爆撃機の役割一変か?
とはいえ、この構想が実現するかどうかは、インドネシア側の判断にかかっています。インドネシアは独立以来、一貫して東西陣営どちらにも加担しない「非同盟主義」を外交の柱としてきました。これは、アメリカともロシアとも中国とも距離を取りつつ、自国の主権を最大限に確保するという立場です。

これを受け、インドネシア軍は各種兵器についてもロシア製とヨーロッパ製、アメリカ製を等しく導入しており、そのことは戦闘機を見ても明らかです。同国空軍では2025年現在、ロシア製のSu-27やSu-30とアメリカ製のF-16を併用しており、さらにフランス製の「ラファール」もオーダー中です。
なお、ロシアとの軍事協力はこれまでも一定程度は存在していましたが、それが自国領土を「戦略爆撃機の発進拠点」とする次元にまでレベルアップさせることはこれまでありませんでした。
インドネシアにとって重要なのは、自国の地政学的価値を最大限に活かしつつも、いずれの陣営にも過度に依存しない「距離感」です。ゆえに今回の打診は、ロシアにとっては「交渉カード」のひとつに過ぎず、実際に軍事展開するというよりも、アジア太平洋における「心理的影響力」の投射である可能性も多分にあるでしょう。
冷戦時代、戦略爆撃機は「核による破滅の翼」として、米ソ両陣営の均衡を保つ象徴でした。しかし21世紀の戦略爆撃機は、核ではなく「影響力」を運ぶものへと変貌しつつあるのかもしれません。
ロシアのTu-95が、遠く南洋のインドネシアを目指すのは、その変貌を物語っています。武力そのものよりも、その所在と示唆が意味を持つ。そう捉えると、戦略爆撃機はある意味で「軍艦」のような存在だと言えるでしょう。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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