フランス製戦闘機を墜とした「未知の中国製ミサイル」早くもベール脱ぐか? インドに主要先進国がこぞって注目のワケ
インドとパキスタンが互いに領有を主張するカシミールで2025年5月上旬、空中戦が勃発。このとき、パキスタンが運用する戦闘機が初の戦果を挙げましたが、使用されたミサイルが早くもインドの手に渡った模様です。
80年ほど前にもあった「技術流出事件」
このたびの出来事は、ある歴史的事件を彷彿とさせます。1958年9月24日、台湾海峡を舞台に台湾(中華民国)と大陸側(中華人民共和国)のあいだで勃発した空中戦です。この戦いは、史上初めて空対空ミサイルが実戦投入された戦いでした。台湾空軍のF-86F戦闘機にはアメリカから供与されたAIM-9B「サイドワインダー」が搭載されていました。

そのため、機関砲しか装備しない中国のMiG-17戦闘機より有利と目されていましたが、交戦の結果、少なくとも一発の「サイドワインダー」が爆発せずにMiG-17の機体に刺さった状態で帰還したとされます。
この神話とも呼べる逸話の真偽は、長らく議論されてきました。現在では、このミサイルはMiG-17に刺さったのではなく、中国沿岸部に落下したものが人民解放軍によって回収され、ソ連に送られたというのが真相であることがわかっています。
ともあれ、この事件によって中国/ソ連の空対空ミサイル開発は飛躍的な進化を遂げ、結果、ソ連でも同種のミサイル「R-13」が誕生しています。このミサイルは、アメリカ製AIM-9Bのほぼ完璧なコピーでしたが、以後数十年にわたり、東側陣営のスタンダードな短距離空対空ミサイルとして各国に供与・販売され、世界中で運用されるようになりました。
今回のPL-15の推進部回収は、70年ほど前に起きた台湾海峡における「サイドワインダー」のやり取りに匹敵するほどの意義は恐らくないでしょう。とはいえ、回収されたPL-15がもたらす技術的な情報が、インドにとって貴重な知見となり得るのは間違いないはずです。
ひょっとしたらPL-15の技術情報を求めて、すでに水面下で米英仏ロなどといった主要国が非公式にインド空軍に接触し始めているかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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