自衛隊の護衛艦の中に実在の「まさかの施設」とは 乗組員しか入れないが戦前からある! しかも管理は “艦長もち”

海上自衛隊の多くの護衛艦の内部には、神社があることをご存じでしょうか。実は戦前の旧海軍から受け継がれています。小さいながらも神様が祀られており、祭日には盛装した艦長や幹部がお参りすることもあります。この習慣、

え、神社設置は艦長の自腹なの!?

 なお、どこの神社から勧請してくるかは、特に日本海軍にも海上自衛隊にも明確な規定はなく、艦長を中心とした幹部の判断に任されているようです。ただ海軍時代の戦艦など、旧国名の冠した艦では、その地域にある神社の中で最も社格の高いとされる一之宮を祀る場合も多かったようです。戦艦「長門」は、長門国一之宮である住吉神社、戦艦「安芸」は安芸国一之宮である厳島神社を勧請しています。

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記念艦となった戦艦「三笠」で設置されている艦内神社(凪破真名撮影)

 同名の神社や関係する土地もあまりない艦艇の多くは、国の守り神ともいえる伊勢の神宮に勧請したり、母港の氏神となっている神社に勧請したりすることが多いようです。

 さて、この艦内神社は2025年現在、艦艇で勤務する自衛官以外ほとんど見ることはできません。いったいどのようなものなのでしょうか。

 もともと艦内はあまり広くありませんので、大きな神社を建立することはできません。小さな社をしつらえ、その中にお札や鏡などを置いた、少し大きめの神棚を想像していただければ間違いないでしょう。ご神体の依り代(神体が寄り付く物体)として、起工時の鋼板の一部を磨いて神鏡にするという慣例もあったようですが、現在行われているかどうかは不明です。

 そして、これがかなり重要ですが、艦内神社の設置や維持・管理に関しては、過去には、神社から社殿の模型などが寄贈されることもあったといいますが、基本的にはその艦の艦長や艦隊司令官の「ポケットマネー」つまり自腹で支払われることが多いです。

 理由としては憲法の20条第3項の政教分離原則に抵触する可能性があるからです。あくまでも乗組員たちが個人的に設置しているに過ぎないということになっています。

 そのため、税金を使って艦内神社を設置しない方針は、海上自衛隊創設から間もない1955年から続いています。政教分離原則から当然ながら神職はおらず、艦内神社は隊員によって管理されています。また、何らかの理由で艦内神社に修繕が必要になった場合も、艦長のポケットマネーや隊員のカンパ金によって行われます。

※一部修正しました(6月8日23時50分)。

【代々「やはぎ」の艦内神社】これが、神社で岡崎市にある矢作神社です(写真)

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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