トランプ大統領「中東のイスラム国家からジャンボジェットもらったぜ!」じつは私的利用との見立ても「使うとヤバい」理由とは
アメリカのトランプ大統領が、新しい大統領専用機の開発遅延を受けて、中東から民間のジャンボジェット機を譲り受けました。ただ、これはだいぶ問題をはらんでいるようです。
自分トコに飾るのが目的!?
現行のVC-25Aは「飛行する通信司令部」であり、後継となるVC-25Bにも同様の能力が付加される見込みです。しかし、そこに「ポン」と持ち込まれたのが、カタールからの747-8の「贈り物」です。

この機体を「エアフォースワン」化するには、現在開発中のVC-25Bと同じく、優れた通信能力の導入、セキュリティ検証と再認証、何年にもわたる開発期間が必要になります。VC-25B計画がこの作業に約10年かけていることを思えば、寄贈機を今から「飛べる指揮所」に作り替えることの非現実性は火を見るより明らからでしょう。
加えて、現行のVC-25B計画を今から白紙に戻すには、すでに投じられた数十億ドル規模の予算と膨大な国家的労力をすべて無にする必要があります。それを受け入れる正当な理由は、政治的にも軍事的にも皆無であるようにも考えられます。これほど大掛かりな機体の受領を、軍や航空技術官僚の同意もないままに進めたように見える今回の構図には、国家としての合理性がまるで見えません。
なぜトランプ大統領はこの合理的ではない選択をちらつかせようとするのか、明確な答えは不明です。そもそも、本機が開発中のVC-25Bに取って代わることはありえるのでしょうか。
最近の報道では、トランプ氏はこの747-8を将来設立する自身の大統領図書館の目玉展示として用いる考えを持っているともいいます。もしそれが本音であれば「エアフォースワン」化のハナシは煙幕で、実際には「モニュメント」を手に入れるための政治的ジェスチャーだった可能性もあるでしょう。実機を展示する大統領図書館の例は、レーガン図書館に展示されているVC-137(ボーイング707)があります。
これは「エアフォースワン」としての役目を終えた機体を退役後に移送したものですが、カタールから寄贈されたボーイング747-8を「元エアフォースワン」の機体として展示するにはほとんど現実的ではなく、幾多の壁を乗り越える必要があるでしょう。
トランプ大統領と「エアフォースワン」をめぐるアメリカ空軍の混乱は当面続くことになるかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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