「4駅だけ」なのに本線? 北の大地を走る“バッサリ短くなった元・長大路線” 今どう利用されているのか?
北海道の苫小牧~鵡川間を結ぶ日高本線は、全長30.5km。わずか4駅しかないミニローカル線にもかかわらず、“本線”を名乗るのには、悲しい歴史がありました。
乗ってみたら“唯一無二の車窓”に魅了された
では、現在の日高本線を見てみましょう。2025年3月の土曜日、苫小牧15時20分発の鵡川行きに乗車しました。
キハ40形気動車の単行運転で、車体は『ありがとう!!「カムイサウルス(むかわ竜)復興トレイン」』塗装(現在は運行終了)であり、国内最大の恐竜とされる「カムイサウルス」の化石や想像イラストがラッピングされています。車内は、国鉄形の気動車そのもので、青いボックスシートが並びます。広告枠には日高本線の写真が入り、楽しい雰囲気が感じまれました。
出発するとしばらく室蘭本線と並走し、一見すると複線のような印象で、苫小牧貨物駅も目に入ります。下り8本、上り9本というわずかな本数ですが、今回の乗車は日中にもかかわらず22人が乗車しており、にぎやかです。
最初の停車駅である勇払まで、13.1km。この区間を12分で走るので、平均速度は65.5km/hと、結構飛ばす印象です。苫小牧東港の近くを走り、さらに超近代的な工場設備も見られる一方、自然のままの湿原も広がります。自然と人工物のコントラストが織りなす独特の車窓が展開し、目が離せません。
勇払着15時32分。4人が下車し、1人が乗車します。先述したように110年以上の歴史がありますが、駅の構造はいたって簡素で、なんとホームは地続きになっています。次の浜厚真までの9.6kmは、10分で走ります。途中、新日本海フェリーの苫小牧東港フェリーターミナルから200mほどの地点を走りますが、残念ながら駅はありません。
厚真川を越えて、15時42分に浜厚真へ到着。1人が下車します。終点の鵡川までは、7.8km。沿線の大半は湿原地帯で、鹿の姿も見られますが、勇払と鵡川の周辺では人家が増える印象です。
かつて富内線が分岐していた鵡川駅は広大で、往時のにぎわいが想像できます。折り返しの鵡川16時19分発の列車には10人が乗車し、少ないながらも利用があることが分かります。むかわ町の住人にとって、現在も貴重な足になっていることが伺えました。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
相変わらず写真が無駄に多すぎて見る気が失せる。撮って出しか何か知らないが、いい加減に取捨選択を覚えてはいかがか。