アメリカ陸軍「やっぱりいらない」に海兵隊反発 共同開発した「新・軍用車」突然の調達停止なぜ?
アメリカ陸軍が、ハンヴィーの後継として導入していたJLTV(統合軽戦術車両)の調達を停止すると発表しました。共同運用していた海兵隊には事前説明がなく、軍内部で摩擦も生じています。
「同じ装備で互いに安く」の理想と現実
兵器開発や装備の調達が政権や予算の影響を受けやすいのは、アメリカに限らずどこの国でも見られる現象です。また、複数の軍種が同一装備を運用する「統合」も、コスト削減や整備の効率化といった観点から頻繁に試みられてきました。
しかし実際には、軍種ごとの任務や運用環境に応じて必要な機能や性能が異なるため、最終的には「ニーズの乖離」による“空中分解”になるケースも少なくありません。
JLTVは汎用性が高く、ヘリコプターによる空輸も可能という軽戦術車としてよくできた車両です。しかし戦車や装甲車に比べるとJLTVは地味で、M10ブッカーの調達停止よりもニュースになっていないようです。
ただ、小型汎用車は重要です。第2次大戦で大量に使われたジープは、アメリカ軍のみならず連合軍に大きく貢献した象徴的なクルマで、6月15日のアメリカ陸軍創設250周年パレードにも登場しました。JLTVもジープと同じく、アメリカ軍全体の「モビリティ(機動性)」を支える、無くてはならないクルマです。
ドリスコル陸軍長官は下院歳出小委員会の公聴会で海兵隊に反対されることを避けるためあえて事前相談せず、政権とペンタゴン上層部にしか報告しなかったことを認めました。
JLTVやM10ブッカーをめぐる今回の動きは、トランプ政権の軍へのコスト見直し、合理化、効率化要求の一環で陸軍も海兵隊もその波に翻弄されているようにも見えます。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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