F1カーなどに付く“ロールバーのような装備”「ヘイロー」 どんな役割がある? 採用されたきっかけとは
「フォーミュラカー」では今や定番の装備となっている「ヘイロー」、どのような理由で設置されているのでしょうか。
今やその重要性を疑う人はいない
2026年3月7日から2026年F1グランプリが開幕します。今シーズンからレギュレーションが改正され、各チームはこれまでのマシンから大きく仕様を変更し、姿も変わりました。
ただ、コックピット部分に設置された「ヘイロー(ハロ)」と呼ばれるバー状の装備は今回も装着されており、もはや見慣れたものとなりました。しかしこのヘイロー、今ではドライバーがむき出しとなっている「フォーミュラカー」では定番の装備となりましたが、まだ見慣れるようになって10年も経っていません。どのような理由で設置されているのでしょうか。
F1と同じくヘイローを装備しているスーパーフォーミュラに参戦しているM-TEC(無限)担当者によると、この装備は2018年シーズンのF1で採用されたのが始まりで、その後ほかのフォーミュラカーもそれに倣う形になったそうです。スーパーフォーミュラでも、2019年から導入されたといいます。
設置の大きな理由は、ドライバーの頭部保護です。
きっかけとなったのは、2014年のF1日本グランプリで発生した重大事故です。このレースで、マルシャF1チームのジュール・ビアンキ選手がコースアウトした後、別の車両の撤去作業中だったクレーン車に激突。脳に重大な外傷を負って昏睡状態となり、9か月後に亡くなりました。なお、F1で死亡事故が発生したのは、1994年サンマリノグランプリでのアイルトン・セナ以来、21年ぶりということで、かなり衝撃的な出来事となりました。
この事故後、ドライバー側の要請を受け、F1を統括するFIAに対して安全性確保を求める声が上がり、考案されたのがヘイローです。
無限の担当者は「前方の車両から外れたタイヤや飛散した部品が飛んできた際のガードのほか、ウォールやガードレールにクラッシュした際に空間をつくり、頭部を守る働きがあります」と説明します。素材は強度の高いグレード5のチタン合金製となっており、「空中に飛ぶようなクラッシュで裏返しの状態で地面に落ちたり、別の車両に乗り上げられたりしても、頭部を守ることができる強度があります」とのことです。
ヘイローはフォーミュラカーのコックピットから見て真正面に支柱があります。このデザインについて、素人考えでは見づらいのではと思ってしまいますが、実際にはそうではないようです。
「まず、レース中は長い直線以外では、ドライバーが正面を注視することはほとんどありません。コーナリングや他の車両と順位を争う際など、中央以外の場所を見ることが多いため、視界の確保は問題ありません」と無限の担当者。なお、車両火災時などでも、すぐにコックピットから脱出できる設計になっているそうです。
導入当初、ヘイローは「マシンの見栄えが悪くなる」といった不評もあったようです。しかし、2020年11月のF1バーレーングランプリで、ハースのロマン・グロージャン選手のマシンがガードレールに衝突し爆発炎上する大事故が発生。このときグロージャン選手はヘイローのおかげで重傷を負うこともなく、軽い火傷のみで脱出に成功し、ヘイローの必要性は疑いようのないものとなりました。
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。





ビアンキの事故はVSCのきっかけであり、2週間後のアメリカからFPでの試験運用が始まり、2015初戦から正式導入された。頭部保護に関しては、フェラーリ当時のマッサの事故がきっかけだが、この時検討されたキャノピー案は、コクピット内温度上昇の現実的な解決策が無く、試験で有効性は確認できたものの、採用は断念され、コクピット周りの車体形状及びヘルメットの材質・仕様変更に留まった。頭部保護機構があらためて検討されることとなったきっかけは、2015年インディ・ポコノでのジャスティン・ウィルソンの事故で、2016年からヘイロー及びウィンドスクリーンの試験が始まり、FIAは2017年からヘイローを、インディは2018年からウィンドスクリーンを、それぞれ正式採用した。