よく見りゃ違う!「オスプレイ」とは似て非なるもの 米陸軍向けの「新ジャンル機」ドコが斬新? メリットは

陸上自衛隊も導入したV-22「オスプレイ」と似ているものの異なる新型機が、このたびアメリカ陸軍から正式な型式名の付与を受けました。ポイントは機体サイズと取得・運用コストのようです。

機体サイズ半分、コストは3分の2

 収容人員はMV-22の24名に対してMV-75は14名であり、輸送能力はおよそ半分強のといったところです。これは輸送機の延長線上にあるMV-22に対し、より小さな戦術単位での兵員・物資輸送や偵察を重視していると捉えることができるでしょう。なお、兵員の乗降場所もMV-22は胴体後部のハッチからでしたが、MV-75はそのようなものはなく、UH-60と同様、胴体側面のドアを開閉することで行います。

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アメリカ陸軍の主力汎用ヘリコプターUH-60「ブラックホーク」。一部の機体はアップデート改修が施され、MV-75の配備後も併用される予定だ(画像:アメリカ陸軍)。

 具体的な性能は、巡航速度が約520km/h、航続距離が約3900kmだそう。これはUH-60の巡航速度約280km/h、航続距離約2220kmと比べ、速度・航続性能ともにほぼ2倍の数値です。単純計算では、地上部隊の投入時間が半分になり、また地上部隊の行動範囲が倍増することを意味し、同機を運用することでアメリカ陸軍は、これまでと同等の兵力でより広い範囲をカバーできるようになると言えるでしょう。

 MV-75の受領が予定されている最初の陸軍部隊は、ケンタッキー州フォートキャンベルに拠点を置く第101空挺師団です。この部隊は、ヘリコプターによる空中強襲に軸足を置いた編成を採っており、その点では適任と言えます。

 最初の納入は2028年末または2029年初頭に開始される予定で、これにより旧式化したUH-60ヘリコプターが段階的に更新される見込みです。

 よく誤解されやすいようですが、MV-75はMV-22の後継機ではありません。先述したとおりMV-75はUH-60の後継機であり、計画ではUH-60の大多数がMV-75に置き換えられる予定となっています。ただし一部のUH-60は近代化改修が施されて、今後も運用され続ける予定です。

 MV-22は高性能な反面、1機あたり7000万ドル(100億円)にも達し非常に高価という欠点を有していました。一方、MV-75は4300万ドル(60億円)程度に抑えることが計画されており、潜在的な対外輸出の可能性も考えられます。このコストの低減は、MV-22では失敗してしまったティルトローター機の世界的な普及という、新境地を開くことに繋がるかもしれません。

【画像】中国の「ブラックホーク」そっくりヘリコプターです

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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