「リオ五輪」開会式の飛行機、その正体は? ライト兄弟の代わりに教科書へ載ったかもしれないブラジル人

2016年8月にブラジルで開催された「リオ五輪」。その開会式に、ある古めかしい飛行機が登場しました。「飛行機の発明」といえばアメリカ人のライト兄弟ですが、実は、あるブラジル人も飛行機を“発明”しているのです。しかし、「飛行機の父」ともいわれるそのブラジル人を待っていたのは、過酷な運命でした。

自分のせいで殺し合う兄弟 みずから命を絶ったデュモン

 デュモンは「史上初の飛行機発明者」という称号こそ逃しましたが、まぎれもなく「飛行機」を“発明”したひとりです。彼は純粋に「空を自由に飛びたい」という夢のため「飛行機」を発明しました。しかしその後、デュモンと「飛行機」を待ち受けた“現実”は、過酷なものでした。

Large 20160813 01
「14bis」ののちにデュモンが設計した「ドモワゼル(トンボ)」号。量産され、ベストセラーに。蝋人形はデュモン本人(関 賢太郎撮影)。

 1914(大正3)年に第一次世界大戦が勃発すると、爆弾を搭載して都市を破壊する「爆撃機」や、飛行機そのものを撃ち落とすために機関銃を搭載した「戦闘機」が登場。「夢の乗りもの」だったはずの飛行機は、「戦争の道具」として使われるようになります。平和を愛するデュモンにとって、自分の発明が若者の命を奪ってゆく現実はとても耐えられないものでした。

 第一次世界大戦の終結後、デュモンは祖国ブラジルや国際連盟に対して飛行機の軍事利用禁止を訴えるも、すでに飛行機は軍隊にとって必要不可欠な存在になっており、デュモンの願いがかなうことはありませんでした。そして1932(昭和7)年、失望と持病の悪化からデュモンは自殺をはかり、59年の生涯を閉じます。

「私の発明が兄弟同士で殺し合う結果を生もうとは、思いもよらぬことでした」

 デュモンはそう、言い残しています。

 自身の初飛行から110年の時を経た平和の祭典、「リオデジャネイロオリンピック」の開会式で、再び世界の注目を集めたデュモン。その心境は、嬉しくもあり、少し悲しくもあるかもしれません。

【了】

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  2. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  3. 海自潜水艦 アメリカ海軍の“歴戦の揚陸艦”を標的に魚雷発射! 実弾演習で巨大な水柱があがる瞬間を公開
  4. 「断固たる措置を講じる」首都高公式ブチギレ! 「公平性を著しく損なう」非常識ドライバーに“鉄槌”…一体何が?
  5. バス運転士「辞めないで」 東京都が“給与の手当”を10年間補助! 独自の定着支援で「路線廃止」を防ぐ
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開