なぜ売り続けた!?「事故ると燃える欠陥車」大企業が陥った恐ろしい「モラルハザード」の悪例とは

自動車メーカーによる不正が発覚し、社会問題となることがあります。しかし、その悪質性から今日でも企業倫理の問題について語られるときに、その悪例として挙げられるのが1970年代の「フォード・ピント事件」です。

敗訴し、ブランドが著しく棄損したフォード

 最初の犠牲者となったグレイの裁判では、フォードを退社した元社員らが欠陥を知りながら開発を進めた事実を証言し、社外秘だったコスト比較計算の存在まで暴露されました。

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1960年代後半から日本車も低価格の割に品質が良いことが徐々にアメリカ市場で存在感を示すようになる。そして、1973年のオイルショック以降に本格的に人気に火がついた。写真は日産「ブルーバード」(画像:日産)。

 これによりフォードは、陪審員裁判において「企業倫理の欠如による悪質な欠陥隠し」と断罪され、類を見ない総額1億2780万ドル(当時の日本円換算で約260億円)もの巨額の懲罰的損害賠償を命じられます。しかし、裁判官による裁定でフォードが被害者に350万ドルの和解金を支払うことで1978年に結審。類似の訴えに対しても、同社が被害者・遺族にほぼ同額の金銭を支払うことで訴訟を回避したのです。

 もっとも、フォードは欠陥車を承知で放置したことで社会から厳しく断罪されることに変わりはなく、巨費を投じて「ピント」の改修をことになっただけでは済まされず、金銭には替えられない製品の信頼性や社会的な信用も失墜させます。その結果、一時フォードは経営を大きく傾かせることになりました。

 なお、社長のアイアコッカは、会長のヘンリー・フォード2世からこの事件の責任を追及され、1978年10月にクビを宣告されました(ただ、1か月後にクライスラー社長へ電撃就任)。

 明るみにならない不正はありません。製品の欠陥を隠蔽したり、リコール隠しを行ったりすることは、近視眼的には経済的な負担を回避できるとしても、いつかは必ず露見します。加えて、発覚したときの経営に与える影響は想像を絶するものになります。

 にもかかわらず、「ピント事件」以降も自動車メーカーによる不正は続いています。まさに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」といえるでしょう。

【欠陥車なのに!?】これが「ピント」から派生した世界的な名車です(写真)

Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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