護衛艦「かが」初公試、完成秒読みに 海自ヘリ空母、4隻体制化の大きな意味、浮き彫りになる課題

充実するヘリ空母、しかしそれにより加速してしまう「海上自衛隊の課題」

 まもなく就役する見込みの「かが」、そして2015年に就役した「いずも」の2隻、「いずも型」のヘリ空母は、ひとまわり小さな「ひゅうが型」にくらべ集中治療室や手術室、病床といった治療施設、トラックなどの搭載能力が充実しています。このたび、洋上における医療、物資輸送の拠点としても能力が高い「いずも型」が2隻になることによって、1隻が長期のドック入りをしていたとしても、常に片方を派遣できるため、災害に対する備えも向上することになるでしょう。

 さらに、「ひゅうが型」は飛行甲板上に設けられた5か所の離発着スポットのうち、垂直離着陸機のMV-22「オスプレイ」は、最後部の「5番」しか使うことができませんでした。しかし「いずも型」ではそのほかのスポットも利用でき、「オスプレイ」の同時離発着も可能。本格的な「ヘリ空母」としての能力に優れます。

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飛行甲板上にSH-60J/Kを搭載する「いずも」。定数は7機だが、物理的には十数機を艦載できる(関 賢太郎撮影)。

 ただ、こうしてヘリ空母が充実する一方で、海上自衛隊の「ヘリコプター不足」が加速するという課題も存在します。海上自衛隊は「空母航空隊」を編成しておらず、既存の基地に配備された航空隊から必要な機数を割いて「いずも型」や「ひゅうが型」、ないしそのほかの護衛艦にヘリコプターを派遣しますが、ヘリコプターの総数自体は増えていません。

 海上自衛隊が保有する対潜哨戒ヘリコプターSH-60J/Kの数はおよそ80機。そのうちの14機、実に2割が「いずも」と「かが」の2隻に割り当てられるため、そのぶんどこかが必ず“割を食う”はず。ほかの護衛艦に搭載されていたヘリコプターが「かが」へ移っただけ、という本末転倒な結果になる可能性も十分にありえるため、今後、SH-60Kの増産が必要になるかもしれません。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

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5件のコメント

  1. 初公試は2日です。訂正ください。

  2. 有事の際には、固定翼機の使用は……アリ?。

  3. ヘリコプターが艦と同じローテションである必要はないんじゃね?
    ついでに言うと、これまでのヘリ搭載護衛艦の整備能力に不安があるからこそ大型で整備スペースの取れる洋上整備集約艦とみなすこともできるんじゃね?

  4. 海上自衛隊(警備隊)発足時に米国がボーグ級護衛空母1〜2隻貸与するプランがあっただとか、80年代もあくまで旧海軍のような空母が欲しいわけではないとの前置きでシーレーンには対潜用のヘリ空母が必要と語ってた現役自衛官幹部がいたように海自の主任務は長らく機雷除去と対潜が中心だったわけですが、今の時期にそれが実現したことが時代とマッチしているのかといたとこまで分析して語った記事にはお目にかかってません。

  5. F-35Bは結局導入できんのか?