ざっと1人30億円!「戦闘機で最も高価な構成品」とは? 維持費だけでも年間6億円「手塩にかけていますから」
戦闘機を構成するものの中で、最も高額といえるのがパイロット、すなわち操縦士です。一人前のパイロットを育て上げるには1000飛行時間が必要で、かつ毎年、相応の訓練で技量を維持することが必須です。
無人機がメインになるのはまだまだ先
「百年兵を養うは一日これを用いんがためである」という言葉通り、空軍力はほんの僅かの実戦のために、非常に長い時間を掛けて訓練し続ける必要があります。

逆に、もし戦闘機だけ購入しパイロットの訓練をしなくて済むならば空軍力は劇的に安価になります。そこで、有望視されているのが無人戦闘航空機(UCAV)です。
有人機に従いコマンドを受け行動する半自律的UCAV「ロイヤルウイングマン」は、現在のところ実現可能性が高いと考えられる形態ですが、こうしたUCAVは人間には必要不可欠である飛行訓練が不要です。平時においては研究開発または有人機の訓練のために少数の機体を稼働状態で維持するだけで済み、大多数を保管しておき、有事の際に稼働機に戻すという方法が、これなら可能になります。
前述したとおり、戦闘機の飛行時間のほとんどは訓練飛行に費やされるため、これをなくすことができるUCAVは革命的変化をもたらす可能性があると考えられています。同じ予算で多くの戦力を配備することが可能となり、または逆に同一の空軍力を保持するために予算を削減することも可能とも言い換えられます。
しかし現実には、UCAVの完全実用化にはまだ壁が多いのが実情です。とりわけ空対空戦闘のような複雑かつ即応性を求められる領域では、熟練パイロットの判断と直感が必要とされる場面は少なくありません。
AIによる判断が一拍遅れれば、それは撃墜を意味する世界です。しかも、戦術・戦略環境は日々変化しており、未知の事態への対処には人間の創造的判断が欠かせないのです。
いずれAIが人間を超える日はやってくるのかもしれませんが、少なくとも近い将来においてはまだまだ有人機の立場を揺るがすほどの性能に達するとは考えられないでしょう。我々は空軍力維持のためにパイロット一人あたり年間6億円の投資を続けていく必要があるのは間違いありません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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