世界中で売れる「南米生まれプロぺラ軍用機」A-29「スーパーツカノ」元々の敵は“反社”だった!? その誕生経緯とは
A-29Nは、NATO(北大西洋条約機構)加盟国での運用要件を満たすよう、A-29「スーパーツカノ」を新たにアップデートした機体ですが、元々同機はブラジルの犯罪組織に対応するために開発された機体になります。
卓越した性能を持ち早期警戒管制との連携も可能
SIVAM(アマゾン監視システム)では、広大なアマゾン地域を監視するため、早期警戒管制機に加えて、人工衛星や航空機によるリモートセンシングの導入も計画されていました。A-29「スーパーツカノ」には、これらの特殊機との共同任務を遂行する能力が求められたほか、低速・低空域での高い操縦性、不整地や短滑走路での離着陸性能も重視されました。

武装面では、両主翼内に12.7mm機関銃を各1挺、計2挺を装備。さらに、兵装を搭載できるハードポイントは、胴体下に1か所、左右の翼下に各2か所ずつ、計5か所が用意されています。これらには、ブラジル国産のピラニア空対空ミサイル、ロケット弾ポッド、レーザー誘導爆弾、20mm機関砲ポッドなど、さまざまな武装を搭載することが可能です。
また、空対空戦闘だけでなく、低空飛行時に地上から発射されるミサイルへの対処も想定されており、レーダー警戒装置やミサイル警報装置、チャフおよびフレアのディスペンサーなど、防御システムも充実しています。エンジンも、従来のプラット・アンド・ホイットニー・カナダ製PT6A-25Cから、出力が約2倍のPT6A-68へ換装され、出力は750馬力から1,600馬力へと大幅に強化されました。
A-29は2003年に実戦配備が開始され、すでに運用が始まっていたエンブラエル製の早期警戒管制機E-99や、リモートセンシング機R-99と連携することで、その真価を発揮するようになります。
国内の犯罪組織相手にこれほどの軍用機を用いるのは過剰にも思えるかもしれませんが、相手は侮れません。ブラジルの反社会勢力は、日本の犯罪組織とは次元が異なり、違法改造された航空機や高速船、地上支援施設をはじめ、ミサイルや対戦車ロケットといった重火器まで保有しています。
そのため、ブラジル空軍も、通常の軍隊とはいかないまでも、準軍事組織やテロ組織に相当する勢力としてこれらに対処しています。特に、E-99との連携による防空網は非常に強力で、標的がレーダーに捕捉されると、即座にA-29「スーパーツカノ」が迎撃に向かいます。
12.7mm機関銃で撃たれたひとたまりもないため、多くの場合違法な航空機は慌てて違法滑走路に着陸し、犯人たちはジャングルに逃走します。時には積荷ごと機体に火を放ち、証拠隠滅を図る――といったケースも少なくありません。ちなみに、大量のコカインが毎年のように押収され、報道でも取り上げられています。また、警告を無視した密輸組織の航空機が、撃墜された事例も実際に存在しています。
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