戦争終わったはずじゃ!? ソ連潜水艦による一週間後の惨劇「三船殉難事件」1700人余が犠牲 でも日露両政府は認めず 何故?【後編】
8月15日は「終戦の日」と呼ばれるため、この日をもって戦争が終わったと思われがちです。しかし、南樺太ではその後も戦闘は続き、しかも北海道の沖合では民間船が沈められ、多数の犠牲者が出ていました。
攻撃した潜水艦はソ連国籍じゃないの?
3隻(うち2隻は前回の記事参照)の緊急疎開船を攻撃した潜水艦については、はっきりと所属国が判明しているわけではありません。

しかし、アメリカとイギリスの潜水艦は1945(昭和20)年8月15日の玉音放送(ポツダム宣言受諾の発表)をうけて作戦行動を中断していたため、ソ連の潜水艦である可能性が濃厚です。なお、1992年に研究者がソ連国防省の戦史研究所を訪問し、当時のソ連潜水艦の行動について調査を依頼したところ、ソ連の潜水艦による攻撃であったことが確認されたといいます。
別の資料では、ソ連太平洋艦隊に所属するL(レーニネツ)型潜水艦のL-12とL-19が当該海域で作戦行動をしていたことが判明しており、この2隻が「小笠原丸」「第二号新興丸」「泰東丸」を攻撃したと考えられます。
しかし、日本政府はソ連潜水艦の攻撃によるものと公式には認めていません。2018年の通常国会において、この三船殉難事件についての質問が野党議員からありましたが、当時の安倍首相は、研究者の調査結果については「私人が独自に行った調査であり、政府として見解を述べることは差し控えたい」としており、ソ連潜水艦の攻撃によるものかどうかについても「事実関係を直接確認する手段がないことから、お答えすることは困難である」と答弁しています。
平時や戦時を問わず、民間の船舶を攻撃することは国際法に違反します。しかし、「小笠原丸」「第二号新興丸」「泰東丸」の3隻は砲や機銃を特設されていたこともあり、純粋な民間船舶(原則として非武装)であるかと問われると難しい面もあるのが実情です。
なお、国際法(民間船舶への攻撃)および戦時国際法違反(白旗を掲げた対象への攻撃)による補償問題を回避するという面もあるのか、ソ連の後継であるロシア政府は、現在まで三船殉難事件はソ連潜水艦によるもの、ということを公式には認めていません。
コメント